労働・労災- 法律コラム・最新判例 -

(最新法令:労働)有期雇用特別措置法が成立

 

11月21日、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(有期雇用特別措置法)が成立しました。

施行は、2015年4月1日からです。

 

2013年4月から施行された改正労働契約法では、有期雇用契約が反復更新され通算5年を超えると、労働者の申し出があれば、期間の定めのない無期の雇用契約となる、企業はそれを拒むことはできないというルールが定められました(18条)。

 

今回は、それに特例を設けるためにつくられたもので、企業のために作られた法律と言えるでしょう。

 

以下に該当する労働者については、5年ではなく、10年まで無期契約に転換させなくて良いとするものです。

1、5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く高度専門知識等を有する有期雇用労働者

2、定年後に有期契約で継続雇用される高齢者

 

ただし、企業がこの特例の適用を受けるには、計画書を作成・提出し、厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。

 

無期転換ルールが施行されたばかりの改定で、特例の対象が将来拡大しないよう、注意をしていかなければならないと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

 

 

(法律コラム:労災)労基署が「持ち帰り残業」を計算し、労災認定

 

金沢市で2011年6月に英会話学校講師の女性(当時22歳)が自殺したのは、自宅で長時間労働する「持ち帰り残業」が原因だったとして、金沢労働基準監督署が労災認定していたことが、11月6日わかりました(2014年11月7日付け京都新聞朝刊)。

 

このケースでは、労基署は残っていたメールや関係者の話から、女性は業務命令で英単語を説明するイラストを描いた「単語カード」を2000枚以上自宅で作っており、持ち帰り残業があったとしました。

残業時間は、労基署員が実際にカードを作成して時間を計測し、自宅で月に80時間程度の残業をしていたと結論付けたそうです。

 

この結果、会社での残業を合わせると、恒常的に月100時間程度の時間外労働があり、更に上司から怒られる心理的負担も加わり、うつ病を発症していたとして、労災が認定されました。

 

自宅での持ち帰り残業は、残業時間の客観的記録が残っていないことが多く、成果物から推測するしかありません。

それが困難で泣き寝入りする遺族や当事者も多いことと思います。

 

これまで私が関わったいくつかの教師の過労死裁判においても、自宅での持ち帰り残業時間を推定するため、多くの同僚教師の力を借り、自宅で作成されたプリントなどの成果物から残業時間を割り出していきました。

そしてそれを裁判所が残業時間として認定し、「業務上」認定を勝ち取ることができました。

 

でも、労基署段階で、しかも労基署員が自ら単語カードの作成を再現して時間を計測し、持ち帰り残業を認めたという事例はこれまでに聞いたことがありません。

画期的な認定だと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

(最新判例:労災)飲食店店長の過労自殺。過失相殺なし(東京地裁)

 

飲食店チェーンの店長だった男性(当時24歳)が自殺したのは、過酷な長時間労働と上司によるパワーハラスメントが原因だとして、会社などに損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、2014年11月4日、約5790万円の支払を命じる判決を下しました(2014年11月5日付け京都新聞朝刊)。

 

判決は、「数ヶ月に1日程度の休みしかなく、長時間労働とパワハラによる強い心理的負荷で精神障害を発症させた」と判断し、「業績向上を目指すあまり適切な労務管理ができる態勢を取っていなかった」と会社の姿勢を批判しました。

 

自殺前の7ヶ月間の残業時間は月平均190時間を超えており、社長個人についても「長時間労働などを簡単に認識できたのに何らの有効な対策を取らなかった」と賠償責任を認めました。

 

更に、判決は、自殺した本人に過失はないとして、賠償額の過失相殺はしませんでした。

これまでの裁判の中には、既往症がうつ病発症に影響している、あるいは精神科医に受診しなかった、などを理由に過失相殺による減額をしたものもありました。

 

当コラム(最新判例:労災)でも紹介しましたとおり、2014年3月24日付け最高裁判決は「使用者は、必ずしも労働者から(通院や病名など)の申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている」「(身体の弱さも)労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れない」などと判断し、会社へ申告しなかったことや身体の弱さを理由とした過失相殺は認めませんでした。

 

労働者の健康管理を行うのは使用者の義務です。

今回の判決も、安易に労働者の過失を認めないという司法の流れに沿った判断と言えるでしょう。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

(法律コラム:最新法令)過労死等防止対策推進法が施行されました。

 

過労死や過労自殺のない社会を実現するため、国の責務で防止策を講じると定めた過労死等防止対策推進法が11月1日施行されました(2014年11月2日付け京都新聞朝刊)。

6月に国会で成立した法律です。

 

対策としては、

①過労死や過重労働の実態の調査研究

②啓発

③相談体制の整備

④民間団体の活動支援

が列挙されています。

 

厚生労働省は、11月には、月100時間以上残業させたり、過労死を理由とした労災申請があったりした企業に対し、労働基準監督署が集中的に指導監督するとしています。

 

ただ、この法律は、過労死をなくすという理念を示すことが主な目的で、労働基準法などのように規制や罰則はありません。

 

また、他方、政府は、年収など一定要件を満たした労働者に対して残業代を支払わないといった労働時間規制適用除外の新たな制度の導入を押し進めています。

これでは、過労死はなくなりません。

 

私たちは、この過労死防止法を力に、過労死のない社会の実現をめざし、国に対し、実効性のある防止対策を行うよう求めていく必要があります。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

(最新判例:労働)マタハラは均等法違反!(最高裁)

 

2014年10月23日、最高裁は、マタニティーハラスメント(マタハラ)について均等法違反とする初めての判断を下しました。

 

広島市の病院で理学療法士として勤務していたAさんは、2004年に管理職である副主任に任ぜられました。

その後、第2子を妊娠したAさんは、労基法65条3項にもとづく妊娠中の軽易な業務への転換を求めたところ、「副主任」を免じられた上、育児休業終了後も「副主任」に戻ることはできませんでした。

そのため、Aさんは、軽易業務への請求を契機として降格されたことが均等法9条3項違反であるとして、管理職手当等の支払を求めて提訴しました。

 

原審の広島高裁は、降格についてはAさんの同意もあり、人事配置の必要性に基づく裁量権の範囲内として、Aさんの請求を認めませんでした。

 

しかし、最高裁は、妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる措置は、原則として均等違反であると判示し、他に本人の承諾や雇用主側の特段の事情などが存在したか否かを検討すべきとして、広島高裁に破棄差戻しました。

 

また、最高裁は、Aさんの同意についても、病院側は十分な説明をしなかったとして、「女性が自由意思で承諾したとは言えない」とも指摘しています。

 

結婚退職制や出産退職制などの女性差別の退職制度が裁判所で違憲無効と判断されてから既に40年以上が経過しようとしています。

しかし、職場では、今なお、妊娠・出産・育児休業などを機にした様々な嫌がらせや不利益取扱いが横行し、社会問題にもなっています。

この最高裁判決を力に、女性たちが嫌がらせに負けず、働き続けてほしいと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

 

(最新判例:労働)育児休業取得で昇給なしは「違法」(大阪高裁)

 

京都市内の病院に勤め、3ヶ月の育児休業を取得した元看護師の男性が、勤務先の医療法人から昇給や昇格で不利益な取り扱いを受けたとして、その違法性が争われた訴訟で、大阪高等裁判所は、7月18日、昇格についての違法性を認めて慰謝料15万円の支払を命じた一審の京都地裁の判決を変更し、昇給させなかったことも違法と判断し、約23万円の支払を命じました(2014年7月19日付け京都新聞朝刊)。

 

育児休業法は、育児休業の申し出や取得したことにより、労働者を不利益な取り扱いをしてはいけないと定めています。

不利益取り扱いとは、解雇することはもとより、契約更新拒否、降格、減給などがあげられます。

しかし、この事件の職場には、育休を3ヶ月以上取ると、翌年度は昇給を認めないという就業規則がありました。

 

高裁判決は、「合理的な理由なく育休者に不利益を課しており、育休を取る権利を保障した育児・介護休業法の趣旨を失わせる」として、昇給が遅れた1年10ヶ月間について、当時の給与・賞与の合計額と、昇給していた場合の合計額の差額約8万円を一審判決の賠償額に上乗せしました。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(法律コラム:労働)残業代、及び付加金についての最高裁判決

 

労働基準法は、労働時間を原則として1日8時間、1週40時間と定めています(32条)。

これを超えて働かせる場合には、労使間の時間外労働に関する規定(三六協定)が必要です(労基法36条)。

 

8時間を超えて働かせた場合には、使用者は労働者に対し、時給の25%の割増賃金(残業手当)を支払わなければなりません。

 

また、大企業は、2010年4月から、月60時間を超えた残業については、50%の割増賃金を支払わなければならないことになっています。

この月60時間以上で50%の残業代は、当面、中小企業への適用は猶予されていますが、現在、政府では、2016年4月をめどに中小企業への適用も検討されています。

 

なお、未払いの残業代を求めて裁判所に提訴した場合、裁判所は、労働者の請求により、使用者に対し、未払金額と同額の付加金の支払を命じることができます(労基法114条)。

ただし、第一審の地裁が付加金の支払を命じても、第二審の高裁の審理が終わるまでに、使用者が未払い残業代を支払った場合には、裁判所は付加金の支払を命じることはできません(最高裁平成26年3月6日判決)。

 

なお、上記の最高裁判例はつい最近言い渡されたものですが、使用者が裁判中に支払ってしまえば、付加金を払わなくてよいことになり、付加金の制裁的意味を没却するもので、承伏しがたいものがありますね。

 

(弁護士村松いづみ)

(法律コラム:労働)産前産後休暇中の社会保険料免除(2014年4月~)

 

子育て支援の1つとして、産前産後休暇中の社会保険料を免除する制度が、2014年4月から始まりました。

 

これは、産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由に仕事を休んだ期間について、事業主の申し出により、健康保険・厚生年金保険の保険料が被保険者分及び事業主分がともに免除されるというものです。

保険料が免除されても、将来、年金額を計算する際には、保険料を納めた期間として取り扱われます。

 

この制度は、今年4月分の保険料から適用になり、本年4月30日以降に産前産後休暇が終了する人が対象となります。

 

手続きは、事業主が「産前産後休業取得者申出書」を産前産後休暇期間中に年金事務所へ提出します。

また、出産前に保険料免除の申し出を行っており、その後、出産予定日と出産日が異なった場合には、「変更届」を提出する必要があります。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

(最新判例:労働)トラックの待機時間も労働時間(横浜地裁相模原支部)

 

作業の途中で次の作業のために待機している時間(「待機時間」「手待ち時間」などと呼ばれています)でも、必要が生じれば直ちに対応することが義務付けられている時間は、実労働時間であって、休憩時間ではありません。

従って、その時間分の賃金も当然支払われなければなりません。

 

そんな判決が4月24日、横浜地裁相模原支部で下りました。

 

原告は、東京北区の運送会社で働くトラック運転手の男性4人。

4人は、配送先でも荷下ろしの指示があるまで車内で荷物管理をしていました。

しかし、会社側は、荷物の積み下ろしがあっても車内で休めるとして、休憩時間を実態より多くして賃金や手当を計算していました。

 

判決は、「出荷場は、運ばれてくる荷物から担当の荷物を見つけなければならず、積んだ後も冷凍機管理などでトラックを離れられない」と指摘し、荷積みや荷下ろしの待ち時間は「実作業時間に当たる」とし、賃金未払い分総額4289万円余りと労基法違反に対する同額の付加金の支払いを命じました。

 

「待機時間」については、このようなトラックの荷下ろしの順番待ちのような場合以外にも、店で客を待っている「客待ち時間」なども該当します。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(法律コラム:労災)免責期間内の過労自殺と生命保険金

 

生命保険の約款には、加入から一定期間内の自殺について死亡保険金を払わないと定めてあるのが通例です。

 

その期間(=免責期間)は、かつては1年や2年でしたが、最近は「3年」となっているようです。

そのため、長時間労働などの過労が原因で自殺したような場合、保険会社から、死亡保険金を払わないと言われることがあります。

 

しかし、生命保険の約款の「自殺」は、本人の自由な意思による自殺を意味します。

過労により「うつ病」などの精神障害などにかかり自殺したような場合には、判断能力を失っている=自由な意思を失っている、と思われるケースが多く、免責期間内であっても、原則として死亡保険金は支払われるべきです。

 

保険会社から支払いを拒絶されても、過労自殺が労災であると認められたような場合など、実際に死亡保険金が支払われるケースもあります。

 

自殺だからと言ってあきらめず、弁護士にご相談ください。

 

(弁護士村松いづみ)