労働・労災- 法律コラム・最新判例 -

(最新判例:労働)育児休業取得で昇給なしは「違法」(大阪高裁)

 

京都市内の病院に勤め、3ヶ月の育児休業を取得した元看護師の男性が、勤務先の医療法人から昇給や昇格で不利益な取り扱いを受けたとして、その違法性が争われた訴訟で、大阪高等裁判所は、7月18日、昇格についての違法性を認めて慰謝料15万円の支払を命じた一審の京都地裁の判決を変更し、昇給させなかったことも違法と判断し、約23万円の支払を命じました(2014年7月19日付け京都新聞朝刊)。

 

育児休業法は、育児休業の申し出や取得したことにより、労働者を不利益な取り扱いをしてはいけないと定めています。

不利益取り扱いとは、解雇することはもとより、契約更新拒否、降格、減給などがあげられます。

しかし、この事件の職場には、育休を3ヶ月以上取ると、翌年度は昇給を認めないという就業規則がありました。

 

高裁判決は、「合理的な理由なく育休者に不利益を課しており、育休を取る権利を保障した育児・介護休業法の趣旨を失わせる」として、昇給が遅れた1年10ヶ月間について、当時の給与・賞与の合計額と、昇給していた場合の合計額の差額約8万円を一審判決の賠償額に上乗せしました。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(法律コラム:労働)残業代、及び付加金についての最高裁判決

 

労働基準法は、労働時間を原則として1日8時間、1週40時間と定めています(32条)。

これを超えて働かせる場合には、労使間の時間外労働に関する規定(三六協定)が必要です(労基法36条)。

 

8時間を超えて働かせた場合には、使用者は労働者に対し、時給の25%の割増賃金(残業手当)を支払わなければなりません。

 

また、大企業は、2010年4月から、月60時間を超えた残業については、50%の割増賃金を支払わなければならないことになっています。

この月60時間以上で50%の残業代は、当面、中小企業への適用は猶予されていますが、現在、政府では、2016年4月をめどに中小企業への適用も検討されています。

 

なお、未払いの残業代を求めて裁判所に提訴した場合、裁判所は、労働者の請求により、使用者に対し、未払金額と同額の付加金の支払を命じることができます(労基法114条)。

ただし、第一審の地裁が付加金の支払を命じても、第二審の高裁の審理が終わるまでに、使用者が未払い残業代を支払った場合には、裁判所は付加金の支払を命じることはできません(最高裁平成26年3月6日判決)。

 

なお、上記の最高裁判例はつい最近言い渡されたものですが、使用者が裁判中に支払ってしまえば、付加金を払わなくてよいことになり、付加金の制裁的意味を没却するもので、承伏しがたいものがありますね。

 

(弁護士村松いづみ)

(法律コラム:労働)産前産後休暇中の社会保険料免除(2014年4月~)

 

子育て支援の1つとして、産前産後休暇中の社会保険料を免除する制度が、2014年4月から始まりました。

 

これは、産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由に仕事を休んだ期間について、事業主の申し出により、健康保険・厚生年金保険の保険料が被保険者分及び事業主分がともに免除されるというものです。

保険料が免除されても、将来、年金額を計算する際には、保険料を納めた期間として取り扱われます。

 

この制度は、今年4月分の保険料から適用になり、本年4月30日以降に産前産後休暇が終了する人が対象となります。

 

手続きは、事業主が「産前産後休業取得者申出書」を産前産後休暇期間中に年金事務所へ提出します。

また、出産前に保険料免除の申し出を行っており、その後、出産予定日と出産日が異なった場合には、「変更届」を提出する必要があります。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

(最新判例:労働)トラックの待機時間も労働時間(横浜地裁相模原支部)

 

作業の途中で次の作業のために待機している時間(「待機時間」「手待ち時間」などと呼ばれています)でも、必要が生じれば直ちに対応することが義務付けられている時間は、実労働時間であって、休憩時間ではありません。

従って、その時間分の賃金も当然支払われなければなりません。

 

そんな判決が4月24日、横浜地裁相模原支部で下りました。

 

原告は、東京北区の運送会社で働くトラック運転手の男性4人。

4人は、配送先でも荷下ろしの指示があるまで車内で荷物管理をしていました。

しかし、会社側は、荷物の積み下ろしがあっても車内で休めるとして、休憩時間を実態より多くして賃金や手当を計算していました。

 

判決は、「出荷場は、運ばれてくる荷物から担当の荷物を見つけなければならず、積んだ後も冷凍機管理などでトラックを離れられない」と指摘し、荷積みや荷下ろしの待ち時間は「実作業時間に当たる」とし、賃金未払い分総額4289万円余りと労基法違反に対する同額の付加金の支払いを命じました。

 

「待機時間」については、このようなトラックの荷下ろしの順番待ちのような場合以外にも、店で客を待っている「客待ち時間」なども該当します。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(法律コラム:労災)免責期間内の過労自殺と生命保険金

 

生命保険の約款には、加入から一定期間内の自殺について死亡保険金を払わないと定めてあるのが通例です。

 

その期間(=免責期間)は、かつては1年や2年でしたが、最近は「3年」となっているようです。

そのため、長時間労働などの過労が原因で自殺したような場合、保険会社から、死亡保険金を払わないと言われることがあります。

 

しかし、生命保険の約款の「自殺」は、本人の自由な意思による自殺を意味します。

過労により「うつ病」などの精神障害などにかかり自殺したような場合には、判断能力を失っている=自由な意思を失っている、と思われるケースが多く、免責期間内であっても、原則として死亡保険金は支払われるべきです。

 

保険会社から支払いを拒絶されても、過労自殺が労災であると認められたような場合など、実際に死亡保険金が支払われるケースもあります。

 

自殺だからと言ってあきらめず、弁護士にご相談ください。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新法令:労働)育児休業給付金が増額されます(雇用保険法改正)

 

4月1日から改正雇用保険法が施行されました。

改正の内容の1つとして、育児休業給付金の増額があります。

 

育児休業給付金とは、原則として子どもが1歳になるまでの育児休業期間中に雇用保険から支給されるものです。

 

これまでの支給額は、休業前の給与の50%でした。

今回の改正で、この金額が育児休業開始から6ヶ月(180日間)に限り、67%に引き上げられることになりました。

 

なお、この改正は、2014年4月1日以降に育児休業を開始する人が対象ですので、例えば3月に開始した人には、残念ながら適用されません。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新判例:労働)過労うつ事件、病歴申告なくても会社に責任を認める(最高裁)

 

職場(東芝)で過労によって、うつ病を発症した労働者が解雇された事案で、最高裁は、3月24日、「労働者からの申告がなくても(会社は)労働環境に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている」として、損害賠償を2割減額した東京高裁判決を破棄差し戻ししました。

 

過労でうつ病になった労働者の訴えに対し、会社は、労働者が神経科の医院への通院歴などを上司に申告しておらず、しかも、もともと身体が弱かったとして、労働者側に過失があったと主張し、原審の東京高裁は、その主張を認め、過失相殺により、損害額を減額しました。

 

しかし、最高裁は、通院や病名などは、労働者にとって、プライバシー情報で、人事考課等に影響するから、職場で知られないようにすると想定されたものだと指摘。

「使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている」と判示しました。

 

また、身体の弱さについても、うつ病発症以前は、長年特段の支障なく勤務を継続しており、「労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れない」として減額を認めませんでした。

 

なお、解雇については、労災による休業期間とその後30日間は解雇できませんので、東京地裁・高裁いずれも解雇無効の判決が出ています。

 

「うつ病」の発症について、本人から病歴などの申告がなくても、会社が過重な業務により体調不良を生じていたことを知りうる状況にあった場合には、業務を軽減するなどの措置をとるよう判示するこの最高裁判決は、労働者の力になるものと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

(法律コラム:労働)マタハラに負けない(その2)産休・育休手当

 

産休や育児休業を取った場合、その期間中の賃金については、法律は何も定めていません。

休暇中の賃金も支給される職場は、数少ないと思われます。

 

そこで、労働者が産休や育児休業を取る際は、健康保険や雇用保険から手当金や給付金が支給されます。

 

産休中は、健康保険から「出産手当金」「出産育児一時金」が出ます。

出産手当金は、1日につき、標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。

出産育児一時金は、子ども1人原則42万円となっています。

 

育児休業中には、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。

これは、男性が育休を取った場合にも同じです。

給付金の額は、1日につき、「休業開始時賃金日額×40%」です。

休業前6ヶ月の平均賃金をもとに計算されるため、妊娠で残業が減ったり、有給休暇を使い果たして欠勤したりした場合は、給付金が少なくなります。

 

また、保育所が定員いっぱいで、育休を延長した場合、育児休業給付金の延長には、原則として子どもが1歳になるまでに保育所に提出した「入所申込書」と、自治体の「不承諾通知」が必要ですので、注意してください。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(法律コラム:労働)マタハラに負けない(その1)産前産後休暇

 

妊娠や出産、育児休暇などに関し、職場で嫌がらせをされるマタニティ・ハラスメントが大きな問題となっています。

中には、明らかな労基法違反や均等法違反の事例もあります。

他方、女性労働者の方も、自分の権利について十分な知識がなく、泣き寝入りしてしまうケースも見受けられます。

そこで、「マタハラ」に負けず、働くことと子育てとを両立させていくための法律知識をご紹介していきたいと思います。

 

まず、産前産後休暇です。

マタハラ相談の中には、「使用者から『うちには産休はありません』と言われた」というものもありました。

 

しかし、産休は、労働基準法65条で定められており、使用者はこれを拒否することはできません。

まして「うちには産休はない」などというのは明らかな労基法違反です。

そのような職場は、労働基準監督署に申告しましょう。

 

産前休暇は、6週間(双子以上の多胎妊娠の場合は14週間)取ることができます。

産前休暇を取るには、労働者本人から請求をする必要があります。

 

産後休暇は、8週間です。

8週間のうち6週間は強制的な休暇ですが、あとの2週間は、本人が働きたいと申し出て、働いても産婦に支障がないと医師が認めた仕事について就労することができます。

ところで、予定された出産日が遅れることがよくあります。

出産日が遅れたからと言って、産後休暇日数を減らすことは許されません。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(最新判例:労働)添乗員の「みなし労働時間制」の適用を否定(最高裁)

 

労働時間が算定困難な場合に、一定時間働いたとみなす「みなし労働時間制」の適用をめぐり、阪急トラベルサポートと同社の添乗員が争った事件で、1月24日、最高裁は、みなし労働時間制は適用できないと判断しました。

 

阪急トラベルサポートでは、同種の事件が他にも裁判所に係属しており、下級審の判断も分かれていたことから注目されていました。

 

労働基準法38条の2本文では、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」と規定されています。

この本文が適用されると、どんなに働いても残業代は請求できないことになります。

そこで、海外ツアーの添乗員の勤務実態が「労働時間を算定しがたい」と言えるかどうかが争点となりました。

 

最高裁は、労働時間の算定が困難と言えるかどうかは、

①業務の内容

②会社と労働者がどのような方法で指示や報告をしているか

などを考慮して判断すべきとしました。

 

そして、今回のケースでは、添乗員は、旅行日程に沿ったスケジュール管理を具体的に指示され、ツアー中は常時携帯電話の電源を入れて、日程変更が必要ならば会社の指示を仰ぐよう求められていた、また終了後は日報を提出して業務状況を詳しく報告させていた、

などと認定し、「添乗員の勤務状況を把握することが困難だったとはいえず、みなし労働時間制は適用できない」と判断しました。

 

この最高裁の考え方によると、IT技術が進歩した今日、労働者に携帯電話やパソコンを持たせれば、大半の場合、使用者は労働時間の管理はできるのではないでしょうか。

 

(弁護士村松いづみ)


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