労働・労災- 法律コラム・最新判例 -

(最新法令:労働)育児休業給付金が増額されます(雇用保険法改正)

 

4月1日から改正雇用保険法が施行されました。

改正の内容の1つとして、育児休業給付金の増額があります。

 

育児休業給付金とは、原則として子どもが1歳になるまでの育児休業期間中に雇用保険から支給されるものです。

 

これまでの支給額は、休業前の給与の50%でした。

今回の改正で、この金額が育児休業開始から6ヶ月(180日間)に限り、67%に引き上げられることになりました。

 

なお、この改正は、2014年4月1日以降に育児休業を開始する人が対象ですので、例えば3月に開始した人には、残念ながら適用されません。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新判例:労働)過労うつ事件、病歴申告なくても会社に責任を認める(最高裁)

 

職場(東芝)で過労によって、うつ病を発症した労働者が解雇された事案で、最高裁は、3月24日、「労働者からの申告がなくても(会社は)労働環境に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている」として、損害賠償を2割減額した東京高裁判決を破棄差し戻ししました。

 

過労でうつ病になった労働者の訴えに対し、会社は、労働者が神経科の医院への通院歴などを上司に申告しておらず、しかも、もともと身体が弱かったとして、労働者側に過失があったと主張し、原審の東京高裁は、その主張を認め、過失相殺により、損害額を減額しました。

 

しかし、最高裁は、通院や病名などは、労働者にとって、プライバシー情報で、人事考課等に影響するから、職場で知られないようにすると想定されたものだと指摘。

「使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている」と判示しました。

 

また、身体の弱さについても、うつ病発症以前は、長年特段の支障なく勤務を継続しており、「労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れない」として減額を認めませんでした。

 

なお、解雇については、労災による休業期間とその後30日間は解雇できませんので、東京地裁・高裁いずれも解雇無効の判決が出ています。

 

「うつ病」の発症について、本人から病歴などの申告がなくても、会社が過重な業務により体調不良を生じていたことを知りうる状況にあった場合には、業務を軽減するなどの措置をとるよう判示するこの最高裁判決は、労働者の力になるものと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

(法律コラム:労働)マタハラに負けない(その2)産休・育休手当

 

産休や育児休業を取った場合、その期間中の賃金については、法律は何も定めていません。

休暇中の賃金も支給される職場は、数少ないと思われます。

 

そこで、労働者が産休や育児休業を取る際は、健康保険や雇用保険から手当金や給付金が支給されます。

 

産休中は、健康保険から「出産手当金」「出産育児一時金」が出ます。

出産手当金は、1日につき、標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。

出産育児一時金は、子ども1人原則42万円となっています。

 

育児休業中には、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。

これは、男性が育休を取った場合にも同じです。

給付金の額は、1日につき、「休業開始時賃金日額×40%」です。

休業前6ヶ月の平均賃金をもとに計算されるため、妊娠で残業が減ったり、有給休暇を使い果たして欠勤したりした場合は、給付金が少なくなります。

 

また、保育所が定員いっぱいで、育休を延長した場合、育児休業給付金の延長には、原則として子どもが1歳になるまでに保育所に提出した「入所申込書」と、自治体の「不承諾通知」が必要ですので、注意してください。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(法律コラム:労働)マタハラに負けない(その1)産前産後休暇

 

妊娠や出産、育児休暇などに関し、職場で嫌がらせをされるマタニティ・ハラスメントが大きな問題となっています。

中には、明らかな労基法違反や均等法違反の事例もあります。

他方、女性労働者の方も、自分の権利について十分な知識がなく、泣き寝入りしてしまうケースも見受けられます。

そこで、「マタハラ」に負けず、働くことと子育てとを両立させていくための法律知識をご紹介していきたいと思います。

 

まず、産前産後休暇です。

マタハラ相談の中には、「使用者から『うちには産休はありません』と言われた」というものもありました。

 

しかし、産休は、労働基準法65条で定められており、使用者はこれを拒否することはできません。

まして「うちには産休はない」などというのは明らかな労基法違反です。

そのような職場は、労働基準監督署に申告しましょう。

 

産前休暇は、6週間(双子以上の多胎妊娠の場合は14週間)取ることができます。

産前休暇を取るには、労働者本人から請求をする必要があります。

 

産後休暇は、8週間です。

8週間のうち6週間は強制的な休暇ですが、あとの2週間は、本人が働きたいと申し出て、働いても産婦に支障がないと医師が認めた仕事について就労することができます。

ところで、予定された出産日が遅れることがよくあります。

出産日が遅れたからと言って、産後休暇日数を減らすことは許されません。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(最新判例:労働)添乗員の「みなし労働時間制」の適用を否定(最高裁)

 

労働時間が算定困難な場合に、一定時間働いたとみなす「みなし労働時間制」の適用をめぐり、阪急トラベルサポートと同社の添乗員が争った事件で、1月24日、最高裁は、みなし労働時間制は適用できないと判断しました。

 

阪急トラベルサポートでは、同種の事件が他にも裁判所に係属しており、下級審の判断も分かれていたことから注目されていました。

 

労働基準法38条の2本文では、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」と規定されています。

この本文が適用されると、どんなに働いても残業代は請求できないことになります。

そこで、海外ツアーの添乗員の勤務実態が「労働時間を算定しがたい」と言えるかどうかが争点となりました。

 

最高裁は、労働時間の算定が困難と言えるかどうかは、

①業務の内容

②会社と労働者がどのような方法で指示や報告をしているか

などを考慮して判断すべきとしました。

 

そして、今回のケースでは、添乗員は、旅行日程に沿ったスケジュール管理を具体的に指示され、ツアー中は常時携帯電話の電源を入れて、日程変更が必要ならば会社の指示を仰ぐよう求められていた、また終了後は日報を提出して業務状況を詳しく報告させていた、

などと認定し、「添乗員の勤務状況を把握することが困難だったとはいえず、みなし労働時間制は適用できない」と判断しました。

 

この最高裁の考え方によると、IT技術が進歩した今日、労働者に携帯電話やパソコンを持たせれば、大半の場合、使用者は労働時間の管理はできるのではないでしょうか。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新判例:労働)業務内容が同じパートに正社員と同額賞与を認定(大分地裁)

 

正社員と同じ仕事をしているのに、パートというだけで賃金が低いのはおかしい・・・・そんなパートさんたちの不満をこれまで何度となく聞いてきました。

 

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(=パート労働法)では、正社員と仕事内容や責任の程度が同じ場合には、パートを正社員と差別的に取り扱ってはならないという規定があり(8条)、また賃金については、正社員との「均衡」を考慮して決定するよう努力せよとの規定(9条)がありますが、現実の労働現場では、これらの規定が有効に働いているとはとうてい思われません。

 

2013年12月10日、大分地裁は、正社員と同じ業務内容にもかかわらず、パート労働者であるためにボーナスや休日の割増賃金が低いのは「合理的理由がない」と判断しました(2013年12月11日付け京都新聞)。

 

原告は貨物自動車の運転手で、1日あたりの労働時間は正社員より1時間短い7時間だったが、業務内容は正社員と同じだったようです。

 

判決の詳細はわかりませんが、労働基準法3条の同一労働同一賃金の原則を適用したものと思われます。

古くは、長野地裁上田支部平成8年3月15日判決で、同じラインで働くパートに対し正社員の8割の賃金を認めた判例はありますが(丸子警報器事件)、同額を認定した判例は初めてだと思われます。

 

画期的な判決です。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

(最新判例:労災)公務災害の遺族補償年金 受給資格の男女差 違憲(大阪地裁)

 

また男女差別事案で憲法14条に反し違憲という判決が下りました。

2013年11月25日、大阪地裁は、地方公務員災害補償法における遺族補償年金の受給資格の男女差は「不合理な差別的取扱いで、違憲、無効」と判断しました。

 

1967年施行の地方公務員災害補償法では、夫が公務災害で死亡した場合、妻には年齢に関係なく、平均給与額の最大245日分の遺族補償年金を毎年支給すると規定しています。

これに対し、妻が死亡した場合の夫の年金受給資格は「60歳以上」と限定。現在は特例で、夫も「55歳以上」であれば年金受給が認められていますが、「55歳未満」の場合は一時金として平均給与額の1千日分などしか支給されません。

 

この規定は、「夫が働き、妻が家庭を守る」という家族モデルが支配的だった1967(昭和42)年に制定されました。

そのため、共働き世帯が一般的となり、女性の正規雇用率が45.5%にものぼる今日の時代の要請には全く合致していないものでした。

その意味では、当然の判決と言えるでしょう。

 

国は、控訴せず、速やかに改正に着手すべきです。

同様の制限は、民間労働者が対象の労災保険や遺族厚生年金にもあり、それらの改正も同時に求められます。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

(法律コラム:労働)税理士・弁護士などにも失業給付 国が扱いを変更

 

弁護士と言っても、独立して事務所を経営(個人とか共同で)している人もいれば、他の弁護士に雇われて働く弁護士もいます。そのような弁護士を「イソ弁」と呼んだりします。また、最近では、企業に直接雇用される弁護士も増えています。

 

これまでは、弁護士・税理士・公認会計士・社会保険労務士・弁理士など、いわゆる「士業」の資格を持つ人が、労働者として勤務していた事業所を退職しても、雇用保険の基本手当(失業給付)の支給対象にはなりませんでした。

 

この取扱いが、2013年2月1日の受給資格の決定から変わりました。

 

きっかけは、税理士事務所を退職したのに「自営業」とみなされ失業給付を受給できなかった大阪府内の男性税理士が2012年12月25日国に提訴したことによります。

厚生労働省は、「士業の被雇用者が増えている背景を踏まえて」として、1月25日付けの職業安定局長通達で取扱いを変更しました。

 

受給できる要件は以下のとおりです。

①雇用保険の被保険者期間が、原則、離職日以前2年間に12か月以上あること

②就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態(失業の状態)にあること

 

弁護士の世界で言えば、弁護士を取り巻く経済環境や労働環境は厳しく、資格があれば生活できる時代ではなくなってきています。

失業した場合の救済策として歓迎です。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新法令・労働)改正労働者派遣法が10月1日から施行

 

2012年3月28日に国会で改正労働者派遣法が成立した時にも「法律コラム」でお知らせしましたが、いよいよ10月1日から改正労働者派遣法が施行されます。

 

改正法は、「派遣切りの防止」や派遣労働者の待遇改善を目的としたものでしたが、残念ながら、当初の案からは大幅に後退した不十分な内容になりました。

しかし、不十分な内容ではあっても、できる限り活用して、労働条件の改善につなげることが大切です。

 

以下、主な改正の内容をご紹介します。

 

①日雇い派遣の原則禁止

日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣は原則禁止となりました。

 

②派遣労働者の待遇の改善

派遣元事業主に対して、派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(マージン率)などの情報公開が義務化されました。

また、雇入れの際には、派遣労働者に対して1人当たりの派遣料金の額を明示し、派遣労働者の賃金決定時の際には、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮しなければなりません。

 

③違法派遣に対する対応(平成27年10月1日から施行)

派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に労働契約を申し込んだものとみなされる制度が設けられました。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新法令:労働)改正高年齢者雇用安定法が成立

 

8月29日、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案」が成立しました。

 

現行法では、定年の定めをしている事業主は、雇用する労働者が定年後65歳にまるまでの間、高年齢者の雇用を確保する措置として、

①定年年齢の引き上げ

②労使協定による継続雇用制度

③定年制の廃止

の3つの措置のいずれかを講じなければなりませんでした。

 

②では、労使協定で継続雇用の対象となる労働者の基準を定めることができ、継続雇用を希望するすべての高年齢者を必ずしも65歳まで全員雇用しなくてよい制度となっています。

 

今回の改正では、②のような措置を廃止し、今後は、労働者が継続雇用を希望した場合には、原則として全員を雇用しなければならなくなりました。

 

ただ、残念ながら、経過措置として、改正法施行前に、既に労使協定を締結して継続雇用制度の対象として継続雇用制度の対象となる高年齢者の基準を定めている場合には、平成37年3月31日までは、厚生年金が受給できる年齢の者に限り、従来の継続雇用制度が効力を有することになっています。

 

この改正法の施行は、2013(平成25)年4月です。

 

(弁護士村松いづみ)