労働・労災- 法律コラム -

(最新判例:労働)非正規の手当・休暇、認める(最高裁)

 

日本郵便の契約社員らが正社員と同じように各種手当や休暇を与えるよう求めた3件の訴訟の上告審判決が、2020年10月15日にあり、最高裁は、扶養手当や病気休暇などに関して「不合理な格差で違法だ」と判断し、契約社員にも認める判決を下しました(2020年10月16日付け京都新聞朝刊)。

 

最高裁が「不合理な格差」と認めたのは、扶養手当、病気休暇、年末年始勤務手当、夏期・冬期休暇、祝日給の5つ。

 

個別企業についての判決ですが、同じような趣旨の手当を設ける職場への影響は大きく、非正規労働者の待遇改善につながる可能性があります。

 

10月13日と15日の最高裁判決では、非正規で働く人にも扶養手当などを支給すべきだが、退職金や賞与は不支給は容認するという判断でした。

しかし、退職金・賞与の最高裁判決も、事案によっては不合理な格差に該当することはあり得ると明言しています。

その意味で、今回の判決は個別事例の判断にすぎず、一般的な基準を示したのではないと言えるでしょう。

 

 

(最新判例:労働)非正規の賞与・退職金格差、不合理認めず(最高裁)

 

非正規労働者と正社員の待遇格差を巡り、賞与や退職金を支払わないことの是非が争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁は、2020年10月13日、「各企業などにおける賞与、退職金の性質や支給目的を踏まえて検討すべき」と判断しました。

その上で、今回の2件のケースは、「不合理な格差」には当たらないと結論付けました(2020年10月14日京都新聞朝刊)。

 

労働環境の変化に伴い、非正規労働者は約2000万人を上回ります。

正規と非正規との格差の拡大が問題となる中、注目されていた最高裁判決でした。

 

大阪医科大学訴訟は、アルバイト職員だった女性の賞与不支給を巡る訴訟でした。

2審の大阪高裁は、賞与が正社員の支給基準の6割に満たない場合は不合理と判断しました。

最高裁は、正社員と比べると、女性の業務は相当に軽易とうかがわれるとし、また、正社員は人事異動があり、アルバイト職員に配置転換はなかったなどと認定し、賞与について労働条件の相違は不合理とまでは評価できないと判示しました。

 

もう1つの東京メトロコマース訴訟は、元契約社員の退職金不支給を巡る訴訟でした。

2審の東京高裁は、「長期間勤務した契約社員に退職金の支給を全く認めないのは不合理だ」と判断しました。

最高裁は、「退職金は、労務の対価の後払いや継続的な勤務に対する功労報償など複合的な性質を有し、職務を遂行し得る人材の確保や定着を図る目的から、さまざまな部署で継続的に就労することが期待される正社員に支給される」とし、「正社員と契約社員の業務の内容、責任の程度を見ると、業務に共通部分はあるが、・・・一定の相違があったことが否定できない」などと認定し、「退職金の有無に係る労働条件の相違は不合理とまでは評価できない」と判示しました。

 

賞与や退職金いずれについても、「不合理な格差と認められる場合はあり得る」との考えを示す一方、使用者側の裁量を広く認めた判決となりました。

 

正規と非正規との不合理な格差を目指す政府の「同一労働同一賃金」制度は、今年4月から大企業で導入されています。

最高裁は、「不合理な格差と認められる場合はあり得る」と判示しましたが、それが一義的な内容でない以上、非正規労働者にとっては、司法の判断を待つなどできません。

法律の整備は急務です。

 

 

 

 

 

 

(最新法令:労働)2020年6月からパワハラ防止法施行

 

パワハラ防止法というのは、改正労働施策総合推進法の通称です。

2019年5月に成立し、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から適用されます。

この法律によって、パワハラ防止のための雇用管理上の措置が企業に初めて義務づけられました。

 

この法律では、パワハラは「優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもので労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。

更に、指針では、6類型に分けて、類型ごとに事例を示していますが、これらに該当しない事例も発生すると考えられ、曖昧さは否めません。

 

企業には、具体的なパワハラ防止措置として、次の3つを義務づけています。

・企業の「職場におけるパワハラに関する指針」を明確化し、労働者への周知、啓発を行う

・労働者からの苦情を含む相談に応じ、適切な対策を講じるために必要な体制を整備すること

・職場におけるパワハラの相談を受けた場合、事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処を行うこと

 

違反に対して、罰則はありませんが、厚生労働大臣が必要だと認めた場合、企業に対して助言や指導、勧告が行われることがあります。

 

 

 

 

 

 

 

(最新判例:労働)非正職員にも賞与を支給すべき(大阪高裁)

 

学校法人大阪歯科大学(現、大阪医科薬科大学)のアルバイト職員として2013年1月から2016年3月に時給制で働いていた女性が、正職員と賞与や手当、休暇制度に差があるのは違法だとして、大学に賞与など約1270万円の支払を求めていた裁判で、2019年2月15日、大阪高裁は、非正職員にも賞与を支給すべきとする判断を示しました(2019年2月16日付け朝日新聞朝刊)。

 

手当については、最高裁が昨年6月に正社員と非正社員の手当の待遇差を「不合理」と初めて判断しましたが、今回、大阪高裁が「賞与」の支払についても認めたのは画期的です。

 

女性は、2015年8月に提訴しましたが、昨年1月、大阪地裁は女性の訴えを棄却したため、控訴していました。

 

控訴審判決は、大学の正職員に支給される賞与は金額が年齢や成績に一切連動していないことから、一定期間働いたことへの対価の性質があると指摘し、非正職員に賞与が全く支払われないことは不合理だと判断しました。

 

夏季休暇と病気休暇についても、「生活保障の必要性がある」などとして待遇差は不合理と認定しました。

 

 

(法律コラム:労働)京都府の最低賃金は時給882円

 

2018年10月1日から、京都府の最低賃金は、時給882円となりました。

同年9月30日までは、時給856円でしたので、26円アップしたことになります。

 

労働者が時給882円以下の賃金で働かされている場合には、差額を請求できることはもとより、使用者は最低賃金法違反で処罰の対象となります。

 

また、最低賃金は、正社員のみならず、パート・アルバイトなどにも適用されます。

 

詳しくは、京都労働局労働基準部賃金室(電話075-241-3215)までお問い合わせください。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(最新判例:労働)正社員と非正社員との待遇差(最高裁)

 

2018年6月1日は、最高裁は、正社員と非正社員の待遇差が、労働契約法20条が禁じる「不合理な格差」にあたるかが争われた2つの訴訟について、判決を下しました(2018年6月2日付け朝刊各紙)。

 

最高裁が労働契約法のこの規定について判断を示したのは初めてです。

 

1つ目の訴訟は、浜松市の物流会社ハマキョウレックスの彦根支店の契約社員のトラック運転手が提訴したものです。

二審は、無事故手当・作業手当・給食手当・通勤手当の差は不合理と認定しましまたが、最高裁は、これらに加え、皆勤手当についても、出勤を奨励する趣旨であり、「出勤を確保する必要性は正社員と差はない」としました。

ただ、住宅手当は、転居を伴う異動がある正社員が受け取れ、勤務場所の変更や出向がない契約社員が受け取れないのは「不合理とは言えない」としました。

 

もう1つの訴訟は、横浜市の運送会社「長沢運輸」を定年退職後に再雇用されたトラック運転手3人が給与や手当などがカットされ、賃金全体が下がったとして提訴したものです。

判決は、退職するまでは正社員として働き、年金支給もあるなどとし、能率給や職務給、住宅手当、賞与の不支給は不合理ではないとしました。

精勤手当の不支給と時間外労働手当の差は不合理としました。

 

最高裁が一定の判断基準を示した意義は大きいものがあります。

いずれにしても、今後、多くの企業で正社員と非正社員との待遇格差の是正が求められるでしょう。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

 

 

 

(最新判例:労働)契約社員にも扶養手当を(大阪地裁)

 

大阪などの郵便局で勤務する契約社員ら8人が、正社員と同じ業務内容であるにもかかわらず、手当や休暇制度に格差があるのは労働契約法違反だとして、日本郵便に対し、正社員と同じ待遇や差額分の支払いを求めた訴訟の判決が、2018年2月21日に大阪地裁でありました(2018年2月22日付け京都新聞朝刊)。

 

労働契約法20条は、雇用期間の定めを理由とした不合理な待遇差を禁止しています。

 

大阪地裁は、年末年始、住居、扶養の各手当の格差を不合理として、差額全額の支払いを認めました。

同じ日本郵便の待遇を巡って争われた2017年9月の東京地裁判決に続いて、格差の不合理を認めました。

大阪地裁判決は、東京地裁では争われなかった扶養手当を新たに認め、また、年末年始勤務と住居への手当は、6~8割の支払から全額支給へと、救済範囲を大幅に拡大する内容でした。

 

ただ、夏期・冬期休暇と病気休暇の地位確認の請求は棄却されました。

 

(弁護士村松いづみ)

(法律コラム:労働)2018年4月まで、あとわずか!「無期転換ルール」が始まります

 

2012年8月に労働契約法が改正され、「無期転換ルール」が新設されました(18条)。

これは、雇用期間の定めがある雇用契約(有期労働契約)が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者が使用者に対し、期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)への転換を申し込めば、当然に、契約が有期から無期へ転換されるというものです。

 

この条項は、2013年4月1日から施行されましたので、同日以降に開始した有期労働契約が対象となります。

そのため、施行日から通算5年となる2018年4月以降、この条項の対象となる事案が数多く生じることは間違いありません。

有期から無期に転換することによって、労働者は、雇用が安定し、安心して働き続けることができます。

積極的に転換を求めましょう。

 

5年を超える日が含まれる契約期間中であれば、申込みが可能です。

 

申込みは、口頭で行っても法律上は有効です。

ただ、口頭の場合、後日「言った」「言っていない」という争いになる可能性もありますので、できれば書面で申込みを行いましょう。

 

無期契約転換後の労働条件は、就業規則等で定めがある部分を除き、直前の労働契約と同一の労働条件となります。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新判例:労働)日本郵便の非正規社員、格差違法(東京地裁)

 

画期的な判決が下りました。

 

2017年9月14日、東京地裁は、日本郵便の非正規社員(有期雇用)3人が、正社員と同じ仕事をしているのに手当などに格差があるのは違法として計約1500万円の支払などを求めた訴訟で、「非正規社員に年末年始手当や住居手当が全く支給されないのは違法」と認定し、計約92万円の賠償を命じました。また、夏期冬期休暇や有給の病気休暇が認められないことも不合理としました。

 

日本郵便で勤務する正社員は約20万人、他方、非正規社員も約19万人と半数近くを占めていおり、判決の影響は非常に大きいものがあります。

 

労働契約法20条は、正社員と期間の定めのある非正規社員の労働条件の違いは、職務内容などを考慮して不合理であってはならないと定めています。

訴訟では、格差の合理性が争われました。

 

判決では、「職務の内容や配置転換の範囲に大きな違いがある」として、夜間特別手当など6つの格差は合理的だとしました。

一方、正社員にある年末年始勤務手当、住居手当、夏期冬期休暇、病気休暇が非正規社員3人にないのは、「不合理な労働条件の違いで、労働契約法に違反し、手当を支給しないことは不法行為となる」と認定しました。

 

正社員と非正規社員との待遇格差を巡る訴訟は、各地で起こされており、判断も分かれています。

この判決が、非正規の待遇格差是正の大きなステップになればと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

(最新判例:労働)医師の年俸に「残業代」は含まれず(最高裁)

 

医師(勤務医)の年俸に残業代が含まれているかが争われた訴訟の判決で、最高裁は、2017年7月7日、「含まれていない」と判断しました(2017年7月8日付け京都新聞朝刊)。

 

原告は、40代の男性医師で、2012年4月から、年俸1700万円の雇用契約で神奈川県の私立病院に勤務していましたが、1日8時間の法定労働時間を超えて働いても、残業代は全く払われませんでした。

病院側は「残業代の一部は年俸に含まれていた」と争っていました。

 

しかし、判決は、残業代にあたる額が不明確なまま定額の年俸を支払う病院の規定では「残業代を支払ったとはいえない」と結論づけました。

 

(弁護士村松いづみ)