相続・遺言- 法律コラム・最新判例 -

(最新法令:相続)改正相続法(その6)~義理の親を介護した「嫁」等にも特別寄与料が~

 

現行の民法でも、被相続人の療養看護などをした相続人には相続分を多めに認められる「寄与分」という制度があります(民法904条の2)。

ただ、この「寄与分」は、法定相続人にしか認められませんでしたので、例えば、長男の「嫁」が義理の両親を介護しても、いざ親の遺産分割となると、金銭的な請求をすることはできませんでした。

 

そこで、そのような不公平を是正するために、今回の改正で、法定相続人ではない親族に対しても「特別寄与料」を他の相続人に請求できるようになりました(改正民法1050条)。

 

「親族」とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を言います(民法725条)。

 

特別寄与料は、法定相続人に対し請求することになります。

当事者間で協議が整わない時には、家庭裁判所に申し立て、決めてもらうことになります。

但し、特別寄与者が相続の開始を知った時及び相続人を知った時から6ヶ月を経過した時、または、相続開始から1年を経過した時は、請求できなくなりますので、注意してください。

 

この「特別寄与」が認められるのは、あまり簡単ではありません。

単に、同居していたとか、入院中に頻繁に病院に行っていたというだけでは、家裁は認めてくれないこともあります。

どのような介護にどのくらい時間を使ったかなどを記した「介護日誌」のような記録をつけておくと良いかと思います。

 

この改正法は、2019年7月1日から施行となります。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(最新法令:相続)改正民法(相続関係)の施行日が決まりました

 

2018年7月に成立した改正民法(相続関係)の内容については、5回にわたり「最新法令:相続」でご紹介しました。

その際には、まだ、改正法の施行日が決まっていませんでしたが、施行日が決まりましたのでお知らせします。

 

まず、原則的な施行日は、2019年7月1日です。

 

ただ、下記の2つの項目については、施行日が異なります。

●自筆証書遺言の方式を緩和する方策        2019年1月13日(既にに施行されています)

●配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等    2020年4月1日

 

また、法務局の遺言保管制度は、遺言書保管法という法律によって規定されており、この施行日は、2020年7月10日です。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(最新判例:相続・遺言)相続分の譲渡も「贈与」にあたる(最高裁)

 

例えば、父親が死亡した後、高齢の母親が自分の相続分を複数いる子どものうちの1人に譲渡する、というようなことが少なからずあります。

そして、その母親が死亡した場合、母親が行った亡父の相続分の譲渡は「贈与」に当たるかということで争われた事案につき、最高裁は、2018年10月19日、民法903条1項の「贈与」(特別受益)にあたると判断しました。

 

民法903条1項は、共同相続人の中に、亡くなった被相続人から、例えば、生前に金や不動産などの「贈与」を受けた者がいるような場合には、その価額を加えたものを相続財産とみなすと規定しています。

 

本件では、母親が生前、亡き父親の遺産分割に際し、自分の相続分を子どものうちの1人に譲渡し、母親が死亡した時には遺産はほとんどなかったという事案でした。

 

原審の東京高裁は、「相続分の譲渡による・・・持分の移転は・・・暫定的なものであり、最終的に遺産分割が確定すれば、その遡及効によって、相続分の譲受人は相続開始時に遡って被相続人から直接財産を取得したことになるから、・・・贈与があったとは観念できない」としました。

 

しかし、最高裁は、譲渡した相続分に含まれるプラス財産とマイナス財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとは言えない場合を除き、経済的利益を合意によって移転するものということができ、「贈与」にあたると判断しました。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(最新法令:相続)改正相続法(その5)~遺言の保管制度の新設~

 

今回、遺言書の保管について、新たに「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)という法律ができました。

これにより、高齢化の進展等の社会経済状況の変化に鑑み、相続をめぐる紛争を防止するという観点から、法務局において、自筆証書遺言を保管する制度が新設されました。

 

自筆で書いた遺言については、遺言書が死亡後何年も経過した後に発見されて遺産分割協議がやり直しになったり、遺言書を見つけた人が破棄したり隠蔽したりしてしまって遺言が執行されないという危険もありました。

そこで、法務局が自筆証書遺言を保管する制度を設けます。

 

申請の対象となるのは、自筆証書遺言(民法968条)です(遺言書保管法1条)。

 

保管の申請は、遺言者本人が自ら出頭して行わなければなりません(同法4条6項・5条)。

 

遺言者は、遺言書の返還や閲覧を請求することができますし(同法6・8条)、相続人や受遺者などは、遺言者の死後、法務局に閲覧を申請できます(同法9条)。

 

また、法務局に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認(民法1004条1項)も必要ないとされていますので、相続人の負担もなくなり、速やかな遺言の執行が期待できます(遺言書保管法11条)。

 

この制度の施行日は、未定です。

公布の日(2018年7月13日)から2年以内に施行されることとされており、施行前には、法務局において遺言書の保管を申請することはできませんので、ご注意ください。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

 

 

(最新法令:相続)改正相続法(その4)~自筆証書遺言の方式の緩和~

 

遺言を書く方法として、多くは、自筆証書遺言と公正証書遺言が利用されています。

 

自筆証書遺言は、費用もかからず手軽に作成することができますが、遺言の全文、日付、氏名を自筆で書かなければならず、しかも、書き間違えた時の訂正の方式も民法で定められています(民法968条)。

簡単な内容の遺言であれば良いのですが、多くの財産を複数の人に分配する内容だと、結構、書くことが負担になることもあります。

 

そこで、今回の改正では、自筆証書遺言の方式が一部、緩和されます。

自筆証書遺言に「財産目録」を付ける場合には、その目録は、代筆やパソコンなどで作成することや通帳を写しなどを添付することなどが可能となりました。

但し、その目録などのページ毎に署名押印する必要があります。

 

この改正については、施行日が既に決まっており、2019(平成31)年1月13日から施行されます。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

(最新法令:相続)改正相続法(その3)~金融機関の「仮払い制度」創設~

 

現在、被相続人の預貯金口座は、金融機関がその死亡の事実を知ると、「凍結」されてしまい、払い戻すには、相続人全員の同意が必要です。

そのため、葬儀費用や負債の支払い、生活費など、当面すぐに必要な金が下ろせなくて困ったというケースが非常に多いと思います。

そこで、今回の改正では、遺産分割前であっても、相続人が預貯金の払い戻し請求ができる2つの方法が創設されました。

 

1、家庭裁判所への保全処分を利用して払い戻す方法

 

家裁に遺産分割の審判又は調停の申立を行い、これに合わせて仮払いの申立をする方法です。

負債の返済や生活費など、裁判所が必要と認めた場合には、遺産に属する預貯金の全部又は一部を仮に取得することができます。

ただ、裁判所への申立が必要なため、費用や時間がかかります。

 

2、家庭裁判所の判断を経ないで払い戻す方法

 

遺産に属する預貯金のうち、各口座ごとに、以下の計算式で求められる金額(但し、上限額があります)については、他の相続人の同意がなくても、単独で払い戻しをすることができます。

 

(計算式)

相続開始時の預貯金債権の額×1/3×当該払い戻しを受ける共同相続人の法定相続分

 

この方法だと、裁判所の手続きが不要で、直接、金融機関の窓口で手続きができますので、簡便ですね。

 

3、施行日は未定です。改正法公布の日(2018年7月13日)から1年以内に施行されます。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新法令:相続)改正相続法(その2)~配偶者保護のための持戻し免除~

 

相続における「持戻し」というのは、聞き慣れない言葉かもしれませんが、現行民法にはその規定があります。

 

「持戻し」とは、被相続人から遺贈や生前贈与によって特別に利益を受けた相続人があった場合には、相続財産にその特別受益の金額を加えた上で、それぞれの相続分の算定を行うとするものです(民法903条)。

 

ただし、被相続人が、この「持戻し」をしなくてもよい旨の意思表示をしていた場合には、この持戻しは免除されます(民法903条3項)。

 

今回の改正では、婚姻期間が20年以上である夫婦間における居住建物やその敷地の遺贈や生前贈与については、民法903条3項の持戻し免除の意思表示があったものと推定し、遺産分割においては、原則として、その居住用不動産の価額を特別受益として扱わず計算することができることになりました。

 

つまり、20年以上結婚していた配偶者に居住用不動産を贈与していた場合には、その不動産を遺産分割の対象の含める必要はないので、配偶者はそれ以外の預貯金などの財産についても多く相続できるようになります。

 

配偶者を保護するための方策です。

 

施行日は未定で、公布の日(2018年7月13日)から1年以内に施行されることとされています。

(最新法令:相続)改正相続法(その1)~配偶者の居住権~

 

相続法の分野を大幅に見直す民法改正(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律)案が、2018年7月6日、国会で可決成立し、同月13日公布されました。

今回の改正は、1980(昭和55)年に、配偶者の法定相続分を3分の1から2分の1に引き上げて以来の、約40年ぶりの抜本的改正です。

 

どのような改正内容なのか、これから、法律コラムの中で、そのポイントを解説していきたいと思います。

 

まず、「配偶者の居住権」です。

 

相続開始時点で、被相続人と同居していた建物に配偶者が引き続き居住できるという権利が創設されました。

「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2種類があります。

 

1、配偶者短期居住権

遺産分割が終了するまでの期間について居住を保護する目的の権利です。

 

相続開始(=被相続人の死亡)とともに当然に発生し、次のいずれか遅い日までの間、配偶者はそのまま無償で居住建物に住むことができます。

①遺産分割により居住建物の取得者が確定した日

②相続開始から6ヶ月を経過する日

 

上記以外で、遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や、配偶者が相続放棄をした場合などには、居住建物の所有権を取得した者は、いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申し入れをすることができ、配偶者は、その申し入れを受けた日から6ヶ月を経過する日までの間、無償でその建物を使用することができます。

 

2、配偶者居住権

これは、長期の居住権で、居住建物を終身または一定期間、無償で使用・収益できる権利です。

 

次のいずれかの場合に、取得することができます。

①遺産分割において、配偶者が配偶者居住権を取得したとき

②配偶者に、配偶者居住権が遺贈されたとき

③被相続人と配偶者との間に、配偶者に、配偶者居住権を取得させる死因贈与契約があるとき

 

この場合、配偶者は居住建物の所有者に対し、配偶者居住権の登記を請求することができます。

 

3、施行日はまだ決まっていませんが、配偶者居住権については、公布の日から2年以内に施行とされていますので、2020年7月13日までに施行されることになります。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

(最新判例)預貯金も遺産分割の対象(最高裁)

 

このタイトルを読んで、「?」と思われた方も少なくないと思います。

預貯金って、遺産分割の対象じゃなかったんですか?と・・・

 

相続人の間で争いがない場合には、死亡した人の預貯金を払い戻すには、通常、相続人全員の戸籍謄本や同意書を金融機関に提出して、手続きをします。

 

ところが、相続人の間で話し合いがつかず、ひとたび遺産分割の調停や審判になった場合には、これまでは事情が違っていました。

調停では各地の家庭裁判所毎に扱いは異なっていましたが、調停が不成立となり審判に移行した場合には、相続人全員が預貯金も遺産分割の話し合いの対象にすると合意しない限り、預貯金は遺産分割の対象にはなりませんでした。

なぜなら、最高裁の「預貯金のように分けられる債権は、法定相続分に応じ分割される」という判例(1954年判例)が裁判の実務を支配していたからです。

従って、遺産分割協議が成立しなくとも、各相続人は、銀行に対し、その相続分に応じた預金の払い戻しを請求することができたのです。

 

しかし、各相続人の個別の事情を考慮せず、一律に法定相続分で自動的に分割されるという従来の最高裁判例は、実態にも、また、公平な相続にも反していました。

 

そこで、2016年12月19日、最高裁は、預貯金は自動的に法定相続分で分割されるのではなく、遺産分割の対象となると判断して、従来の判例を変更しました。

 

 

 

 

(最新判例:相続・遺言)斜線が引かれた遺言「無効」(最高裁)

 

亡くなった父親の自筆の遺言に赤い斜線が引かれていた場合、その遺言は有効かどうかが争われた訴訟で、2015年11月20日、最高裁判所は、「無効」と判断しました(2015年11月21日付け京都新聞朝刊)。

 

開業医だった男性が2002年5月に亡くなった後、病院の金庫から、封に入った男性の自筆による遺言書(1986年6月22日付け)が見つかりました。

封書には「開封しないで知り合いの弁護士に相談するか家裁に提出して公文書としてもらうこと」という付箋が貼ってありました。

遺言書には、長男に土地や預金を相続させると書かれていましたが、全体に赤いボールペンで1本の斜線が引かれていたという事案です。

 

長女が長男を相手に、遺言が無効だとして提訴。

一審も二審も、「斜線があっても文字が判読可能で、焼き捨てられるなどしていないため、効力は失われない」と遺言を有効と判断しました。

 

しかし、最高裁は、文面全体に斜線を引いたことは「一般的な意味に照らして、遺言全体を無効にする意思の表れ」と判断し、遺言は無効としました。

 

民法では、自筆による遺言を取り消すには、「変更」か「破棄」の必要があり、変更した箇所には押印などを求めています(民法968条2項)。

 

それを、1本の斜線のみで「無効」とするのは、なんとなく割り切れません。

故人の遺志に合致するのでしょうか・・・

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

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