労働・労災- 法律コラム -

(最新判例:労働)業務内容が同じパートに正社員と同額賞与を認定(大分地裁)

 

正社員と同じ仕事をしているのに、パートというだけで賃金が低いのはおかしい・・・・そんなパートさんたちの不満をこれまで何度となく聞いてきました。

 

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(=パート労働法)では、正社員と仕事内容や責任の程度が同じ場合には、パートを正社員と差別的に取り扱ってはならないという規定があり(8条)、また賃金については、正社員との「均衡」を考慮して決定するよう努力せよとの規定(9条)がありますが、現実の労働現場では、これらの規定が有効に働いているとはとうてい思われません。

 

2013年12月10日、大分地裁は、正社員と同じ業務内容にもかかわらず、パート労働者であるためにボーナスや休日の割増賃金が低いのは「合理的理由がない」と判断しました(2013年12月11日付け京都新聞)。

 

原告は貨物自動車の運転手で、1日あたりの労働時間は正社員より1時間短い7時間だったが、業務内容は正社員と同じだったようです。

 

判決の詳細はわかりませんが、労働基準法3条の同一労働同一賃金の原則を適用したものと思われます。

古くは、長野地裁上田支部平成8年3月15日判決で、同じラインで働くパートに対し正社員の8割の賃金を認めた判例はありますが(丸子警報器事件)、同額を認定した判例は初めてだと思われます。

 

画期的な判決です。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

(最新判例:労災)公務災害の遺族補償年金 受給資格の男女差 違憲(大阪地裁)

 

また男女差別事案で憲法14条に反し違憲という判決が下りました。

2013年11月25日、大阪地裁は、地方公務員災害補償法における遺族補償年金の受給資格の男女差は「不合理な差別的取扱いで、違憲、無効」と判断しました。

 

1967年施行の地方公務員災害補償法では、夫が公務災害で死亡した場合、妻には年齢に関係なく、平均給与額の最大245日分の遺族補償年金を毎年支給すると規定しています。

これに対し、妻が死亡した場合の夫の年金受給資格は「60歳以上」と限定。現在は特例で、夫も「55歳以上」であれば年金受給が認められていますが、「55歳未満」の場合は一時金として平均給与額の1千日分などしか支給されません。

 

この規定は、「夫が働き、妻が家庭を守る」という家族モデルが支配的だった1967(昭和42)年に制定されました。

そのため、共働き世帯が一般的となり、女性の正規雇用率が45.5%にものぼる今日の時代の要請には全く合致していないものでした。

その意味では、当然の判決と言えるでしょう。

 

国は、控訴せず、速やかに改正に着手すべきです。

同様の制限は、民間労働者が対象の労災保険や遺族厚生年金にもあり、それらの改正も同時に求められます。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

(法律コラム:労働)税理士・弁護士などにも失業給付 国が扱いを変更

 

弁護士と言っても、独立して事務所を経営(個人とか共同で)している人もいれば、他の弁護士に雇われて働く弁護士もいます。そのような弁護士を「イソ弁」と呼んだりします。また、最近では、企業に直接雇用される弁護士も増えています。

 

これまでは、弁護士・税理士・公認会計士・社会保険労務士・弁理士など、いわゆる「士業」の資格を持つ人が、労働者として勤務していた事業所を退職しても、雇用保険の基本手当(失業給付)の支給対象にはなりませんでした。

 

この取扱いが、2013年2月1日の受給資格の決定から変わりました。

 

きっかけは、税理士事務所を退職したのに「自営業」とみなされ失業給付を受給できなかった大阪府内の男性税理士が2012年12月25日国に提訴したことによります。

厚生労働省は、「士業の被雇用者が増えている背景を踏まえて」として、1月25日付けの職業安定局長通達で取扱いを変更しました。

 

受給できる要件は以下のとおりです。

①雇用保険の被保険者期間が、原則、離職日以前2年間に12か月以上あること

②就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態(失業の状態)にあること

 

弁護士の世界で言えば、弁護士を取り巻く経済環境や労働環境は厳しく、資格があれば生活できる時代ではなくなってきています。

失業した場合の救済策として歓迎です。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新法令・労働)改正労働者派遣法が10月1日から施行

 

2012年3月28日に国会で改正労働者派遣法が成立した時にも「法律コラム」でお知らせしましたが、いよいよ10月1日から改正労働者派遣法が施行されます。

 

改正法は、「派遣切りの防止」や派遣労働者の待遇改善を目的としたものでしたが、残念ながら、当初の案からは大幅に後退した不十分な内容になりました。

しかし、不十分な内容ではあっても、できる限り活用して、労働条件の改善につなげることが大切です。

 

以下、主な改正の内容をご紹介します。

 

①日雇い派遣の原則禁止

日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣は原則禁止となりました。

 

②派遣労働者の待遇の改善

派遣元事業主に対して、派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(マージン率)などの情報公開が義務化されました。

また、雇入れの際には、派遣労働者に対して1人当たりの派遣料金の額を明示し、派遣労働者の賃金決定時の際には、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮しなければなりません。

 

③違法派遣に対する対応(平成27年10月1日から施行)

派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に労働契約を申し込んだものとみなされる制度が設けられました。

 

(弁護士村松いづみ)

(最新法令:労働)改正高年齢者雇用安定法が成立

 

8月29日、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案」が成立しました。

 

現行法では、定年の定めをしている事業主は、雇用する労働者が定年後65歳にまるまでの間、高年齢者の雇用を確保する措置として、

①定年年齢の引き上げ

②労使協定による継続雇用制度

③定年制の廃止

の3つの措置のいずれかを講じなければなりませんでした。

 

②では、労使協定で継続雇用の対象となる労働者の基準を定めることができ、継続雇用を希望するすべての高年齢者を必ずしも65歳まで全員雇用しなくてよい制度となっています。

 

今回の改正では、②のような措置を廃止し、今後は、労働者が継続雇用を希望した場合には、原則として全員を雇用しなければならなくなりました。

 

ただ、残念ながら、経過措置として、改正法施行前に、既に労使協定を締結して継続雇用制度の対象として継続雇用制度の対象となる高年齢者の基準を定めている場合には、平成37年3月31日までは、厚生年金が受給できる年齢の者に限り、従来の継続雇用制度が効力を有することになっています。

 

この改正法の施行は、2013(平成25)年4月です。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

(最新法令:労働)改正労働契約法

 

2012年8月3日、有期労働契約に関する労働契約法の一部改正案が成立しました。

 

その主な改正点は次のとおりです。

①有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(改正18条)

有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換させる。

 

②有期労働契約に対する判例法理である雇止め法理の成文化(改正19条)

有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または、有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき合理的期待が認められる場合には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新されたものとみなす。

 

③期間の定めのあることによる不合理な労働条件の禁止(改正20条)

 

しかし、今回の改正で、企業側が通算5年以上になる前に契約更新を打ち切り、雇止めを行う危険性が考えられます。

また、職場を6ヶ月以上離れれば、以前の契約期間は算入しない「クーリング期間」が導入されたため、間を空ければ何度でも短期契約を繰り返す抜け道にもなりかねません。

 

労働者としては、このような問題点も認識しつつ、職場での積極的な活用と実践が求められます。

 

(弁護士 村松いづみ)

 

 

(法律コラム:労働・労災)改正育児・介護休業法。7月1日からすべての事業主に適用。

2010年6月30日から施行されている改正育児・介護休業法は、これまで、従業員数が100名以下の中小企業には適用が猶予されていましたが、2012年7月1日からは、すべての企業に全面的に適用されるようになります。

今回適用となる改正の主な内容は、以下のとおりです。

①短時間勤務制度
 原則として3歳に満たない子を養育する男女労働者について、所定労働時間の短縮措置(原則として1日6時間)を設けること
②所定外労働の制限
 3歳に満たない子を養育する、原則としてすべての男女労働者から請求があった場合、所定外労働を免除すること
③介護休暇
 要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う、原則としてすべての男女労働者は、申し出により1日単位で介護休暇を取得できる(要介護状態の家族が1人の場合には年5日まで、2人以上の場合には年10日まで)

                              (弁護士村松いづみ)

(法律コラム:労働・労災)「名ばかり管理職」と残業代

係長や店長に昇進した喜びも束の間、もらった月給袋からは残業代がなくなって給料ダウンということがよくあります。

労働基準法は、残業に対しては、通常の賃金の2割5分以上の率の残業手当を払うよう定めています(37条1項)。
その例外として、企業経営の必要上「監督・管理の地位にある者」にはこれが適用されないとしています(41条)。
では、「長」がつけば、この管理監督者に該当してしまうのでしょうか。

厚生労働省は、管理監督者とは、労務管理について経営者と一体的な立場にある者で、出勤や退勤について厳しい制限を受けない者を言うとしています。
従って、具体的には会社の大きさなどによっても異なりますが、「長」がついたからといって当然残業代がなくなるわけではないのです。

裁判例でも、「名ばかり管理職」の実態を認め、残業代の支払いを命じたものがあります。

                              (弁護士村松いづみ)

(法律コラム:労働・労災)正当な理由のない解雇にはノーを!

「社風に合わない」など訳のわからない理由で、あるいは理由すら告げられぬまま、クビ(解雇)を言い渡されることがあります。
とりわけパートやアルバイトの場合、雇い主の中には「いつでも自由に辞めさせることができる」と思いこんでいる人も少なくありませんが、これは間違いです。

一時的・臨時的な仕事のために雇い入れ、その臨時の必要性がなくなった時に辞めてもらうのであれば、問題は生じませんが、通常、労働者を解雇する時には「解雇やむなし」と言えるような正当な理由を必要とします。
これはパートやアルバイトでも同じです。

では、何が「正当な理由」になるのでしょうか。

犯罪を犯した場合、病気で長期間仕事に耐えられない場合、勤務成績がひどく悪い場合などが代表的なものとしてあげられますが、要するに個々具体的に社会通念上解雇はやむを得ないと考えられる場合です。

従って、納得のいかない時は、「辞めません」とはっきり言いましょう。

また、いろいろな事情で、やむなく解雇を承諾する場合でも、労働基準法は、雇い主が労働者を解雇する場合、30日前に予告するか、かわりに30日分の平均賃金(解雇予告手当)を払うかしなければならないと定めています(20条)ので、労基法どおりの取り扱いを要求しましょう。

                              (弁護士村松いづみ)

(最新判例)精神不調による欠勤社員の解雇は無効(最高裁)

精神面での不調を抱えて欠勤を続けた男性社員を、会社が「無断欠勤」として諭旨退職の懲戒処分としたことの是非が争われた裁判で、最高裁は、4月27日、「精神的不調で欠勤している労働者には、会社は精神科医の診断を受けるさせるなどして、経過を見るなどの対応を採るべき」とし、このような対応を採らず解雇とした処分を無効と判断しました。
(2012年4月28日付け朝日新聞)。

事案の概要は、次のとおりです。

訴えていたのは日本ヒューレット・パッカード(本社・東京)を2008年に解雇された男性(41歳)。
男性は、被害妄想など何らかの精神的不調を訴え、盗撮や盗聴で自分の日常生活が監視されていると会社に訴えました。
そして、問題が解決しない限り出勤しないとあらかじめ会社に伝えた上で、有給休暇をすべて取得した後、約40日間にわたり欠勤を続けたため、解雇されました。

職場で精神的不調を訴える労働者が増えています。
その意味で、この判決は、社会的に大きな影響を与えると思います。

                               (弁護士村松いづみ)