当事務所は、2025年8月14日(木)から同月21日(木)まで夏季休業いたします。
今夏も暑い日が続きますが、皆さまもくれぐれも健康にはご留意くださるようお願いします。
来る8月10日(土)から18日(日)まで、当事務所は夏期休暇となります。休業明けは19日(月)です。よろしくお願いします。
労働者の病気や怪我を国(労基署)が労災と認定した際、事業主(使用者)が不服を申し立てられるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(堺徹裁判長)は4日、「不服を申し立てられない」とする初めての判断を示し、「申し立てられる」とした二審(東京高裁判決)を破棄しました。
病気や怪我をした労働者や遺族は、労基署から業務との相当因果関係(業務起因性)が認められれば、治療費などの給付を受けられます。これは労働者と行政機関の手続きで、事業主(使用者)は不服申し立てができないとされてきました。一方で労災保険では、労災認定されると事業主の保険料負担が増える場合(メリット制)があります。
今回の訴訟では、一般財団法人「あんしん財団」(東京都)が国を相手に、職員の労災認定取り消しを請求しており、保険料増額という不利益を受ける事業主には「認定の是非を争う権利がある」と主張していました。一審・東京地裁は訴えを退けましたが、2022年の二審は一転して「権利がある」と判断していました。
最高裁は、被災労働者等の迅速かつ公正な保護という労災保険の目的に照らし、労災保険給付に係る多数の法律関係を早期に確定するとともに、専門の不服審査機関による特別の不服申立ての制度を用意することによって、被災労働者等の権利利益の実効的な救済を図る趣旨に出たものであって、特定事業の事業主の納付すべき労働保険料の額を決定する際の基礎となる法律関係まで早期に確定しようとするものとは解されないとし、仮に労災支給処分によって上記法律関係まで確定されるとすれば、当該特定事業の事業主にはこれを争う機会が与えられるべきものと解されるが、それでは、労災保険給付に係る法律関係を早期に確定するといった労災保険法の趣旨が損なわれることとなるとしています。そして、特定事業の事業主は、自己に対する保険料認定処分についての不服申立て又はその取消訴訟において、当該保険料認定処分自体の違法事由として、客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額が基礎とされたことにより労働保険料が増額されたことを主張することができるから、上記事業主の手続保障に欠けるところはないとも判示しています。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/169/093169_hanrei.pdf
旧優生保護法(1948年~1996年)下での不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、障害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審で最高裁大法廷は、旧法は立法時において違憲であったとし、国に損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
1 憲法13条に違反するか
旧法の規定は、特定の疾病や障害のある人たちを対象とする不妊手術を定めたものであり、不妊手術は生殖能力の喪失という重大な結果をもたらす身体への侵襲行為であり、不妊手術の強制は憲法13条の保障する 「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」に対する重大な制約であり、正当な理由に基づかすに不妊手術を強制することは憲法13条に反し許されない。旧法の規定は、特定の個人に生殖能力の喪失という重大な犠牲を求める点で、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反するものであり、憲法13条に反する。
2 憲法14条に違反するか
憲法14条は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱を禁止している。旧法の規定は、特定の障害のある人たちを不妊手術の対象と定めているが、この規定により不妊手術を 行うことに正当な理由があるとは認められない。これらの人を不妊手術の対象者と定め、それ以外の人と区別することは、合理的な根拠に基づかない差別的取扱にあたり、旧法の規定は憲法14条に違反する。
3 旧法の立法行為は違憲か
旧法の規定は、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白であったから、規定に関する国会議員の立法行為は、国家賠償法の適用上、違法の評価を受ける。
4 除斥期間適用の可否
国は、旧法の規定に基づいて、約48年もの長期間にわたり、国家の政策として、正当な理由に基づかずに特定の障害がある人たちを差別して重大な犠牲を求める施策を実施してきた。さらに、その実施に当たって、身体の拘束、麻酔薬の使用、欺罔などの手段を用いるなどして、優生手術を積極的に推進してきた。また、不妊手術で損害を受けた人に国に対する損害賠償請求権の行使を期待するのは極めて困難だったというべきである。このような諸事情に照らすと、各事件の訴えが除斥期間の経過後に提起されたことだけをもって、請求権が消滅したとして国が損害賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない。
5 結論
原告らの損害賠償請求権の行使に対し、国が除斥期間の主張をすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されない。したがって、請求権が除斥期間の経過で消滅したとはいえない。
訴訟の最大の争点は、20年で損害賠償請求権が絶対的に消滅する除斥期間という「時の壁」でした。過去、最高裁は、この規定につき、画一的な年月の経過という除斥期間を絶対視し、被害者の救済に背を向けてきました。しかし、今回の判決では、最高裁は過去の判例を変更し、今回のような事案では、国が除斥期間を理由に損害賠償請求権の消滅を主張すること自体が権利の濫用として許されないと判断し、事件の原告だけでなく、約25000人もいる被害者の救済に道を開いたものと言えます。今後の焦点は、国の対応に移ることになりますが、被害者の多くが高齢者であり、国による全面的な解決が早期に実現されなければなりません。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/164/093164_hanrei.pdf
2017年3月27日、栃木県那須町のスキー場周辺で、登山講習中の県立大田原高の生徒ら8人が死亡した雪崩事故で、宇都宮地裁は5月30日業務上過失致死傷罪に問われた教諭ら3人の過失を認めて、「雪崩が自然現象という特質を踏まえても、相当に重い不注意による人災だった」としていずれも禁錮2年(求刑禁錮4年)の判決を言い渡しました。部活動中の事故で引率教諭らが実刑判決を受けるのは異例ですが、判決理由の中で、「学校活動の一環で安全確保が強く求められる中、地形や少なくとも30㎝の新雪の状況から雪崩事故が起きる危険性を容易に予見することができた」として過失を認定しました。
当日は、「春山安全登山講習会」の3日目、最終日でした。計画では、講習の仕上げ、復習として茶臼岳(百名山の那須岳)登山を行なうことになっていました。しかし、日本の南岸を北東に進む低気圧の影響で、26日夕方から雪が降り始め、27日朝までに30㎝の雪が積もり、テントが雪の重みで潰れかかったり、入り口が雪で埋まったりしていました。午前6時過ぎ、大雪と悪天が予想されたため、茶臼岳登山を中止することが決定されました。代わりにラッセル訓練(歩行訓練)を行なうことになり、営業が終了している那須温泉ファミリースキー場ゲレンデと隣接する樹林帯で行なうことになりました。午前8時43分、雪崩が発生し、高校生7名と教師1名の尊い命が失われました。
裁判では、引率教師ら3人が当日の朝の時点で雪崩の発生を予見できたかが争点となり、検察側が「冬山登山の知識や経験があり予見できた」と主張し、禁錮4年を求刑したのに対し、弁護側は「必要な情報は収集していたが雪崩は予見できなかった」として無罪を主張していました。多少なりとも雪山登山の経験のある私の知識でも、新雪が30㎝も積もっており、急斜面の、しかも樹林の疎らな斜面を歩行するのであれば、新雪雪崩が起きる可能性が大きいと判断することができます。引率教員らは、雪山経験も豊富な方々であり、なぜ雪崩が予見できなかったのか、不思議でなりません。ましてや、高校生たちの雪山歩行訓練としての行事です。その意味では、裁判所が「前日からの新雪が30㎝に達しており、雪崩の危険性を予見することは十分に可能だった」と認定し、その上で「安全確保が強く求められる教育活動だったのに、緊張感を欠き、漫然と訓練を実施した」と指摘し、「雪崩の危険を予見することは十分に可能で、相当に重い不注意で人災」と認定したのは当然かと思います。
SNSの投稿で殺人事件の遺族を傷つけたとして訴追されていた岡口基一裁判官(58歳)に対し、国会に設置されている弾劾裁判所(裁判長:船田元衆議院議員)は、4月3日、罷免する(裁判官を辞めさせる)判決を下しました。
裁判官には、「司法の独立」を守るため、憲法で身分保障がなされていますが、「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」があったときなどには、弾劾裁判で罷免することができることになっています。これまでの弾劾裁判で罷免された裁判官は7人いるが、それは買春などの犯罪行為や職務上の重大な不正行為があった場合に限られています。今回の事案は、職務外の表現活動を理由とするものであり、初めてのケースでした。どのような表現活動が罷免理由としての「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」にあたるのかが争点になっていました。
弾劾裁判所は、裁判がその役割を果たす上で絶対に不可欠なのが国民の裁判に対する信頼であり、裁判官が国民の信託に反する行為を行った場合に「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」となるという基準を示した。そして、裁判官であっても自分の意見や思いを主張することは、表現の自由として保障されているとした上で、不特定多数に拡散するSNSの特性に鑑み、他者を傷つけないように十分配慮すべきであるとし、本件の表現行為は、遺族を繰り返し中傷するものであって、憲法が保障する表現の自由として裁判官に許される限度を逸脱したもので、「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」にあたるとしました。
確かに、岡口裁判官の今回のSNS投稿は、遺族の被害感情を傷つけるものであり、不適切なことはそのとおりです。この点は、岡口裁判官も素直に認めて反省の弁を述べています。問題は、憲法の保障する表現の自由や裁判官の身分保障の観点からして、裁判官を罷免するに値するほどの非行であったかどうかです。もともと裁判官は、その保守的な組織に縛られ、他の職種に比べて情報発信することを自重する傾向にあります。したがって、表現行為を理由として罷免することは慎重に考えないとなりません。弾劾裁判は、通常は最高裁が訴追請求して開始されますが、今回は被害者遺族が請求したことに端を発していて、被害者感情に必要以上に引きずられた感が否めません。仮に、岡口裁判官のSNS投稿が裁判官としての威信を著しく失うべき非行」にあたるとしても、間もなく裁判官任期が満了し再任希望しないこと(裁判官を辞めること)を明言していること、すでに最高裁から二度の戒告処分を受けていること、被害者遺族が起こした民事裁判でも名誉毀損として賠償を命じられたこと、岡口裁判官自身も謝罪していることなどに鑑みると、裁判官の身分を奪うだけでなく法曹資格をも奪ってしまい、また退職金も全く支給されない罷免という処分はあまりにも苛酷ではないかと思います。
本年1月1日能登地方を震源地とした震度7の地震が発生しました。沿岸部には津波が押し寄せ、道路の陥没、法面の崩落により、珠洲市、輪島市、七尾市、能登町、穴水町などでは750人を超える人々が孤立しています。建物の倒壊も相次ぎ、すでに73人の死亡が確認され、未だ行方がわからない方も多数にのぼっています。現在も救出・救助作業が行われていますが、難航しており、被害の全容がつかめない状況ということです。
今回の災害で被災された方々に対し、衷心よりお見舞いを申し上げるとともに、災害発生直後から懸命な救助・救援・復旧活動に従事されている消防、警察、自治体職員、ボランティアの皆さま、その他関係の皆さまに敬意を表する次第です。被災された方々が一日も早く平穏な生活を取り戻すことができるようお祈りいたします。
明けましておめでとうございます。
新年の営業開始は1月5日(金)からです。どうかよろしくお願いいたします。
当事務所は、8月14日(月)から同月21日(月)まで夏期休業をいただきます。
どうかよろしくお願いいたします。
ご用件はメールかFAXを入れて下さい。
メール asano@libertice.jp
FAX番号 075-744-0027
2023年(卯年) 明けましておめでとうございます。
今年もどうかよろしくお願いします。
当事務所も、旧京都リバティス法律事務所(故村井豊明弁護士)を承継して、早やまる2年が経過しました。皆さまの困りごとをお聞かせいただき、その解決に精一杯努力したいと思います。「困ったときのリバティス」になりたいと思いますので、皆さまどうかお気軽にご相談ください。まずは電話(075-744-0026)ください。法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談もやっていますので、ご利用いただければ幸いです。