離婚- 法律コラム -

(法律コラム・離婚)DV被害者の国民年金保険料の免除

 

厚生労働省は、配偶者のドメスティック・バイオレンス(DV)から逃れるため別居している人に対し、国民年金保険料の全額または一部を免除できるよう省令を改正しました(2012年7月31日付け京都新聞朝刊)。

 

国民年金保険料は、現在、月額1万4980円で、免除額は全額、4分の3、半額、4分の1の4段階に分かれています。

どれだけ免除されるのかの基準は、本人が扶養している家族の数などに応じて決められます。

たとえば、扶養家族が1人の場合、前年の所得が92万円以下なら全額免除となります。

 

保険料の免除申請は、各地の年金事務所で受け付けられます。

初回申請の際、婦人相談所や配偶者暴力相談支援センター等の公的機関が発行する証明書(配偶者からの暴力の被害者の被害者の保護に関する証明書)の添付が必要です。

 

なお、保険料が全額免除や一部免除になった期間は、保険料を全額納付したときに比べ、将来受ける年金額が少なくなります。

 

(弁護士 村松いづみ)

(法律コラム:離婚)これって不利ですか?(その2) 生活保護を受けること

 

不幸にも夫婦関係がうまくいかず別居した場合、配偶者が生活費(婚姻費用)を支払ってくれず、また援助してくれるような親族もいないような場合には、生活保護に頼らざるを得ません。

 

とりわけ、女性の場合、同居中、専業主婦であったり、パート収入しかないような場合には、今の世の中では、すぐに正社員の職場を見つけることは困難です。

 

そのような場合、「生活保護を受けていても、離婚の際に子どもの親権者になれますか?」という相談を受けることがあります。

 

大丈夫です。

 

親権は、子どもを一人前の社会人にするために監護・養育する親の責務というべきもですから、親権者をどちらにするかということは、何よりも子どもの利益、子どもの福祉を中心に決められるべきものです。

親権の決定にあたっては、父母の心身状況、監護・養育の条件、子どもの年齢や意思、現在の監護の状況などを総合的に考慮して決められます。

父母の経済的事情も、判断材料の1つではありますが、重視されるわけではありません。なぜなら、本来は、養育費をどのように負担し合うかの問題だからです。

 

きちんと生活保護を受けて、子どもを育てていくことの方が重要です。

 

(弁護士 村松いづみ)

 

(法律コラム・離婚)愛人をつくった夫からの離婚請求

結婚生活が完全に破たんしてしまったら、それは離婚原因となりますが、その破たんの原因を作り出した本人から離婚の請求ができるかは問題です。

例えば、愛人を作って不貞行為を行った夫からの離婚請求がその典型例です。

このようなケースにつき、最高裁は、1987(昭和62)年9月2日、婚姻が破たんしている場合には、戸籍上の婚姻を存続させることは不自然であるとしながら、一方では「社会的・法的秩序としての婚姻を廃絶するものであるから、離婚請求は、正義・公平の観念、社会的倫理観に反するものであってはならないことは当然で・・・・信義誠実の原則に照らしても容認されうるもの」でなければならないとしました。

その上で、最高裁は、下記の3点を、有責配偶者からの離婚請求を認める要件としました。

①別居期間が相当長期に及ぶこと
②未成熟の子が存在しないこと
③相手方に対する相当な婚姻費用、財産分与、慰謝料などを払うこと

①~③の要件は、抽象的なので、その基準は一律ではありませんが、その後の判例の流れの中で、少しずつ緩和されてきているような気がします。

                              (弁護士村松いづみ)

(法律コラム:離婚)これって不利ですか?(その1) 先に離婚を切り出すこと

「離婚したいけれど、先に離婚を口に出した方が不利ですか?」という相談を時々受けることがあります。

そんなことはありません。

離婚できるか否かは、そもそも夫婦の間に離婚原因があるかどうかに関わりますし、慰謝料が取れるかどうかは離婚に至る主たる責任が相手にあるかどうかで決まりますので、どちらが先に「離婚」を切り出したかで有利不利ということはありません。

これに関係して、「先に家を出た方が不利ですか?」という相談も受けることがあります。

確かに夫婦には同居義務がありますから、「ここがイヤ」「あそこがイヤ」という単純な理由で別居というのは、不利になるかもしれませんね。

でも、いくら努力しても、夫婦関係が改善しない、あるいは気持ちが通じ合えないような場合には、同居を続けること自体で、自分が精神的に追い込まれていく結果にもなりかねません。
そんな時は、思い切って別居をしても不利になることはありません。

                               (弁護士村松いづみ)

(法律コラム:離婚)離婚を有利に進める方法(その3)

離婚の時、争いになるものの1つに「財産分与」があります。

財産分与というのは、結婚後、夫婦で築いた財産を離婚の時に分けるというものですが、それには当然「財産」が存在することが大前提です。

でも、もし相手方が自分名義の「財産」を隠している場合、裁判所が探してくれるわけではありません。

ですから、同居している間に、最低、相手がどこの金融機関と取引しているかなどを調べておく必要があります。
取引金額まで把握できなくても、金融機関の支店名まではわかっていた方がよいと思います。
それだけでもわかっていれば、離婚訴訟の中で申請すると、裁判所がその金融機関に取引の有無や取引履歴を照会してくれます。

                               (弁護士村松いづみ)

(法律コラム:離婚)離婚を有利に進める方法(その2)

妻側からの離婚原因として、「夫が生活費をくれなかった」「くれても少ししかくれなかった」などと主張することがあります。

また、夫側からは「きちんと生活費を渡していたのに、妻が浪費していた」「妻には家計の管理能力がない」などと主張されることがあります。

そんな時、家計簿があれば証明は容易です。
また家計簿からは、その家族の生活の実態も見えてきます。

もちろん、離婚などを考えていなくても、家計をきちんとやっていくには、家計簿をつけた方が良いでしょう。

最近は、家計簿の無料ソフトなどをダウンロードしてパソコンでもつけられますよね。
さあ、今日から家計簿をつけましょう。

                               (弁護士村松いづみ)

(法律コラム:離婚)離婚を有利に進める方法(その1)

長年、離婚事件を扱ってきましたが、夫婦の間の出来事は、二人にしかわからないことが多く、「言った」「言わない」、こんなことが「あった」「なかった」の争いとなり、証拠がない場合、たとえ真実であっても裁判所が認めてくれないこともあり、とても悔しい思いをすることが少なくありません。

そこで、不幸にも離婚を考えるようになった時に少しでも有利に進められるためのアドバイスです。

日記を書くこと。

日記はほぼ毎日、その日の出来事や思いを書くものですから、それが継続されておれば、かなり信用性は高いと言えるでしょう。

「日記を書くのは大変」と思われる方、手帳や予定表の余白に日付けを入れて、その日の出来事や思いをたとえ2~3行でも記しておかれるのでもいいと思います。
もし家計簿をつけておられるなら、その余白やメモ欄でもかまいません。

言葉は(録音しない限り)消えてしまいます。少しでも記録にとどめておくことが大切ですね。

                               (弁護士村松いづみ)

(法律コラム:離婚)DV法について

配偶者などの親密な関係にある者からの暴力をドメスティック・バイオレンス(DV)と言います。

暴力は、殴る蹴るという身体的暴力だけでなく、大声で怒鳴る、監視するなどの精神的暴力や嫌がるのに性行為を強要する性的暴力も含まれます。

このような配偶者などの暴力から被害者の生命身体の安全を確保するための法律「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)が2001年4月に制定され、また、2007年7月に一部改正もされました。

DV法は、配偶者などから重大な危害を加えられる恐れがある場合は、地方裁判所に保護命令を申し立てることができると定めています。

具体的には、被害者や子ども、親族に近づくことを禁止したり、電話やメール等を禁止したり、自宅から退去することなどを求めることができます。

                              (弁護士村松いづみ)

(法律コラム・離婚)離婚の時の年金分割

2007(平成19)年4月から離婚時の年金分割制度が始まり、この制度もようやく国民(とりわけ女性)の中に浸透してきたような気がします。

これは、2007(平成19)年4月以降に離婚した場合、婚姻期間の被保険者期間にかかる年金(厚生年金と共済年金が対象)について、その2分の1を上限に、配偶者の一方(主には妻)が他方に対し分割請求できるという制度です。
「夫が払った保険料は、妻と共同で負担したもの」という考え方がとり入れられたものと言われています。

ただ、制度の内容を誤解している方も見受けられますので、注意してください。

まず、この制度は、離婚した時点で年金がもらえるのではなく、あくまで将来、自分自身が年金を受給するときにもらえる制度です。従って、元配偶者が離婚後死亡しても、もらえます。

また、分割の対象は、厚生年金と共済年金なので、分割請求ができるのは、サラリーマン、公務員及び私立学校の教職員などを配偶者にもつ者のみということになります。

そして離婚後2年以内に社会保険事務所に分割請求することが必要です。
合意できない場合には、家庭裁判所が決めてくれますので、申し立てましょう。

                                  (弁護士村松いづみ)

(法律コラム・離婚)親権者の決め方

離婚の場合、子どもの親権をめぐって争いになることも少なくありません。

調停の中でも親権者について話し合いがまとまらなければ、結局、離婚自体がまとまらないので、離婚訴訟の中で、最終的には裁判所が親権者を決めます。

一昨年、親権も争われている離婚訴訟で、当時16歳になる娘さんに家裁に来てもらいました。
家裁の手続きでは、15歳以上の子どもの親権者を決めるには、その子の陳述を聴かなければならないことになっているからです(人事訴訟法32条4項)。

娘さんは、一人で裁判官と面談し、はっきり「おかあさんがいい」と言ってくれました。
母と娘がまるで友達同士のように明るく会話をしていたのが、とてもほほえましくうつりました。

親権者を父母のいずれにするかという問題は、何より子どもの幸せや福祉を中心に決められるべきものです。世間体や意地などから親権を争うことだけは、やめてほしいものです。

                                  (弁護士村松いづみ)