離婚- 法律コラム -

(法律コラム:離婚)子の引き渡しの直接強制、「原則自宅で」

 

離婚した夫婦の子を裁判所の執行官が一方の親から強制的に引き離す「直接強制」について、全国の裁判官らが協議し、学校や通学路などで行っていた執行をやめ、原則自宅で執行することを決めました。

最高裁が5月中にも全国の裁判所に周知するとのことです(2013年5月11日付け読売新聞)。

 

夫婦が別居した場合や離婚した場合、そのどちらかが子どもを監護しているわけですが、非監護親から監護親に対し「子どもを返せ」という申し立てが家裁になされることがあります。

 

家裁は、双方の言い分や生活状況などを聞いた上で子どもがどちらの親のもとで生活するのがより良いか判断を下します。

家裁が子どもの引き渡しを命じた場合、監護親が素直にそれに従って子どもを非監護親に戻せば問題はないのですが、従わない場合には、強制執行が問題になります。

 

そもそも子どもは「物」ではありませんので、裁判所の執行官が監護親と子どもを直接引き離すという強制執行(直接強制)が可能かという議論があります。

民事執行法には、子の引き渡しの直接強制についての明文規定はありませんが、最近の執行の実務では、一定の事件については直接強制も可能として手続きは行われているようです。

 

しかし、直接強制ができるとしても、実際に子どもを取り戻すことは簡単ではありません。

子どもが通常いる場所がどこかなど正確な情報が必要で、自宅以外に、保育園や学校、通学路などで執行が行われてきたようです。

 

今回、執行場所は「自宅を原則とする」というルールが初めて出された背景には、保育園で監護親と執行官がもみ合いになるなど多くのトラブルが生じていたと報道されています。

でも、果たして、自宅であれば、そのようなトラブルは減るのでしょうか。

 

どのような議論の中でこのようなことがルール化されるのか、これからも情報を集めていきたいと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

(法律コラム:離婚・相続)家裁が変わる~新しい家事事件手続法のポイント(その1:申立書が相手方へ送付される)

 

2013年1月1日から、新しい家事事件手続法が施行されました。

 

これまで家庭裁判所で行われる家事事件の手続きについては、昭和22年に制定された家事審判法により定められていました。

しかし、その後、時代とともに我が国の家族をめぐる状況や国民の法意識が変化したことから、現状に適合した内容とするということで、全面的な見直しが行われ、昨年5月に家事事件手続法が制定されました。

 

ただし、この法律が施行される前に申し立てられた事件には、原則として適用がありません。

 

改正点は、たくさんあります。1度で説明することは困難ですので、今後このコーナーで少しずつお話していきたいと思います。

 

まず、大きく変わったのは、調停申立書や審判申立書の写しが相手方に送られるようになりました。

これまでは、相手方には期日の呼出状だけが送られてきましたので、申立人が何を求めているのかは実際に第1回期日に行ってみないとわからないということがよくありました。

申立書が送付されることによって、相手方もそれについて準備をして第1回の期日にのぞむことができるようになったわけです。

ただ、DVなどのため相手方に住所などを知られたくない場合には、別に記載方法がありますのでご相談ください。

 

調停中に提出する書面や資料は、すぐには相手方の目にはふれませんが、調停が不成立になって審判に移行するような事件の場合(例えば、婚姻費用分担請求や遺産分割など)には、原則として記録を閲覧したり、謄写したりすることが許されます。

よって、最終的には相手方の目にふれることがあるという前提で提出する必要があります。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

(法律コラム・離婚)試行的面会交流

 

「試行的面会交流」というのは、別居中の非監護親から監護親(子どもと一緒に暮らしている親)に対し、子どもと面会したいという調停や審判が申し立てられた場合、家庭裁判所が、その手続きの中で、非監護親と子どもとの面会の様子や状態を知るなどの目的のため、非監護親と子どもとが「試しに」面会することを言います。

 

京都弁護士会では、2013年4月16日、京都家裁から裁判官と調査官に来ていただき、「試行的面会交流」の研修会を行いました。

 

試行的面会交流の方法は、家裁の中のプレイルームという部屋で行う方法と外で行う方法とがあり、いずれも家裁の調査官が立ち会います。

 

京都家裁のプレイルームは、6畳くらいの広さの部屋で、おもちゃやぬいぐるみ、ゲームなどがたくさん置いてあって、子どもと親とが一緒に遊べるようになっています。

そのプレイルームは、隣の部屋からガラス越しに様子を見ることができます(プレイルームの方からは見えません)。

 

また、京都では、紅葉で有名な永観堂の協力をいただき、永観堂の中で試行的面会交流が行われる場合もあります。

 

子どもの面会交流は、親同士の感情的な対立のもとで、なかなか話し合いが進まないこともありますが、子どもにとって何が一番利益になるのかを考えて決めなければならないと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

 

(最新判例・離婚)離婚などの父母の子の面会拒否に「間接強制」を認める(最高裁)

 

父母が別居や離婚をしたため離れて暮らす子どもと非監護親との面会について、調停や審判で決まったことが守られず、子どもとの面会が実現しない場合があります。

そのような場合、間接強制(例「面会を履行しない時は、1回につき金●円を支払え」)が認められるかが問題となっていましたが、3月28日、最高裁判所は、3件の事件について初めての判断を下しました。

 

最高裁が間接強制を認めたのは、3件中1件だけでした。

最高裁は、判決の中で、面会の日時や頻度などを具体的に取り決めても約束が守られない場合は、制裁金の対象となると判示しました。

 

間接強制が認められた札幌事件の場合には、「月1回、毎月第2土曜の午前10時から午後4時まで」「場所は・・・相手方自宅以外の相手方が定めた場所」「子どもの受渡場所」などが具体的に定められていると判断しました。

 

他方、間接強制を認めなかった福島と高知の事件の場合には、面会の大枠だけ決めて具体的な日時などは父母の協議に定めることを予定していること(福島事件)や、引き渡しの方法について何も定められていないこと(高知事件)などを理由としました。

 

更に、最高裁は、子ども自身が面会を拒否しているような場合でも、そのような場合には、新たに調停や審判を申し立てればよいので間接強制を否定する理由にはならないとも判示しました。

 

最近、子どもの親権や面会をめぐるトラブルが増えています。

今回の最高裁の判断は実務にも大きな影響を与えそうです。

 

(弁護士 村松いづみ)

 

(法律コラム:離婚)婚姻費用などの審判に不服がある時の手続き

 

婚姻費用や子どもの面会交流などについて家庭裁判所で調停を行ったが、話し合いがまとまらず不成立となった時、その手続きは審判に移行します。

 

審判手続きに移行すると、裁判官は、関係者の言い分などを聴取した後、審判を下します。

 

審判で、例えば「婚姻費用を○○円支払え」と判断された時、その内容に不服がある当事者は、即時抗告という手続きを取ることができます。

その期間は、2週間以内です。

即時抗告をすると、今度は、高等裁判所の3人の裁判官が判断し決定が下されます。

事実の争いについては、ここまでです。

 

法律の解釈の重要な事項をめぐって争いがある場合には、さらに許可抗告申立てという手続きを取ることができます。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

 

 

(法律コラム・離婚)離婚協議書の作成とその効力

 

離婚する場合、夫婦の間で、離婚後、金銭面で何も支払いを受けないような場合には、協議書の作成は不要かもしれません。

あえて協議書を作るのであれば、「お互い、離婚に関し、今後一切請求しない」という確認くらいですね。

 

しかし、財産分与や慰謝料を離婚後に一括あるいは分割で後払いで受領するような場合や養育費のように将来にわたって毎月受領するような場合には、約束の内容を文書にしておくことは絶対に必要です。

離婚協議書は特に様式があるわけではありません。

ただ、支払時期や支払い方法(銀行振込か否か)、分割払いの場合に何ヶ月分あるいは何回怠ったら一括で請求できるかなどを定めておくことは必要です。

 

でも離婚協議書を作成するだけで安心してはいけません。

協議書だけでも約束としては、もちろん有効です。

ただし、協議書だけしかないと、義務者が約束を破った場合には、権利者は、あらためて裁判を起こさなければなりません。

義務者が約束を破った場合、すぐに強制執行ができるようにするには、約束の内容を公正証書としておくか、家裁の調停で合意して調書を作ってもらうか、どちらかが最低必要となります。

 

夫婦の間で離婚の条件について合意ができた場合でも、1度、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

(法律コラム・離婚)別居期間について

 

民法では裁判上の離婚原因が以下の5項目にわたって定められています(770条1項)。

①不貞行為

②悪意の遺棄

③3年以上の生死不明

④強度の精神病にかかり、回復の見込みがない

⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

 

①から④にあたる事実、あるいはそれに匹敵する事実があれば⑤によって、裁判で離婚が認められるでしょう。

 

しかし、そのような決定的な事情がない場合(たとえば、性格の不一致や価値観などの考え方の相違など)には、離婚理由のほかに、別居期間の長さも考慮されます。

裁判所の大勢は「破綻主義」の方向にありますから、別居期間が長くなればなるほど、「婚姻関係が既に破綻しており回復の見込みがない」と判断されやすくなります。

 

では、どの程度別居すれば、「婚姻関係が破綻している」と認められるのでしょうか。

裁判所は、明確な基準を示しておらず、離婚理由、婚姻期間、子どもの有無や年齢なども含めて判断しています。

平成8年に法制審議会が民法改正案を答申した時に「5年以上の別居」という提案をしたことから、相談者の中には「5年別居しないと離婚ができない」と思っている人もおられるようですが、5年以内でも離婚を認めた判決は少なくありません。

 

ちなみに、2012年11月9日、ワイドショーなどの注目をあびた高島政伸・美元夫妻の判決が東京家裁で言い渡されました。夫婦の別居期間は2年3ヶ月でしたが、夫高島政伸からの離婚請求は認められました。同居期間が1年11ヶ月だったことや子どもがいないことなどが考慮されたようです。

 

「別居期間が短いから離婚できないんじゃないか」とあきらめないで、離婚調停などから順に始めていけばよいと思います。

 

(弁護士村松いづみ)

 

 

(法律コラム・離婚)浮気調査について(その1)

 

離婚の相談を受けた時、「夫の浮気の証拠をつかむには探偵に頼んだ方が良いですか?」と尋ねられる場合がある。

残念ながら、弁護士や法律事務所というのは、テレビドラマとは違って、刑事事件の犯人を捜し出したり、尾行して浮気調査したりはしない。

 

妻がこっそり夫の携帯電話を盗み見て、彼女との間の「好き好きメール」などを入手していても、それだけの証拠だけでは、裁判官は、なかなか浮気を認定してくれない。

私は「主婦の勘」にはかなり信憑性があると思うが、裁判は「勘」だけでは勝てない。

「ラブホテル」に出入りする写真があればなあと思う事件はたくさんある。

 

私も長年、離婚事件を扱っているので、依頼者の妻たちが様々な工夫や努力によって夫の浮気の証拠を集めて来られるのには、本当に感心する。

だから、探偵に頼まなくても、それなりに証拠をつかめる方法のいくつかは知っているので、相談者や依頼者の方にはそのノウハウを提供している。

 

探偵に頼むかどうかは、金がかかることでもあるし、調査が成功するかどうかわからないことでもあるので、弁護士としては、相談者や依頼者の方の判断にお任せすることになる。

提携している探偵事務所もない。

ただ、探偵さんが、何をしてくれて値段がいくらか、それは1日なのか数日なのか、調査結果を書面で作成してくれるのかどうか等しっかり尋ねた上で契約しなさいね、とアドバイスすることにしている。

 

(弁護士 村松いづみ)

 

(法律コラム:離婚)これって不利ですか?(その3) 別居時の財産の持ち出し

 

夫婦が別居する場合、夫婦の一方が財産を持ち出して家を出ることがあります。

「夫名義の○○を持って出ていいですか?」と相談されることもあります。

 

判例は、実質的な夫婦の共有財産の2分の1以下の持ち出しについては、違法性を認めず、最終処理は財産分与に委ねています。

なぜなら、財産分与は、夫婦のどちらの名義であろうと、夫婦で協力して築いた財産であれば、離婚の際には公平に清算されるべきものだからです。

 

ただし、夫名義の権利証や通帳を持ち出しても安心はできません。

持ち出されたことに気がついた夫が、権利証や通帳を「紛失した」として、新しいものを作成し、処分したり解約したりしてしまう可能性もあるからです。

 

(弁護士 村松いづみ)

 

(法律コラム・離婚)DV被害者にも児童扶養手当が支給されます

 

児童扶養手当は、父または母と生計を同じくしていない子どもが育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与し、子どもの福祉の増進を図ることを目的として、支給される手当です。

 

しかし、これまで児童扶養手当は、父母が別居しただけでは支給されず、離婚しないと支給されませんでした。

今回、法改正があり、平成24年8月からは、離婚が成立していなくても、父または母が裁判所からDV保護命令を得た場合には、その子どもについて児童扶養手当が支給されることになりました。

 

そのほかの支給要件もありますので、詳しくは、お住まいの市町村にご相談ください。

 

なお、手当は、申請の翌月分から支給開始となります。

ただし、8月1日に支給対象となった人については、8月中に申請をすると、8月分の手当から支給を受けることができますので、早めに手続きをしましょう。

 

 

(弁護士 村松いづみ)