離婚- 法律コラム -
(法律コラム・離婚)年金分割の按分割合が0.3となった事例
離婚時の年金分割における按分割合について、家庭裁判所は、一切の事情を考慮して決めるとされています。
ただ、婚姻期間中の保険料等の納付は、夫婦互いの協力により行ったと評価することができ、夫婦の寄与の程度は、特別の事情がない限り、互いに同等であると考えるのが一般的な見解です。
そして、これまでの主な裁判例は、夫婦の間にある程度の別居期間があっても、「特別事情に当たるとは認められない」と、按分割合は0.5と定めてきました。
これに対し、東京家裁平成25年10月1日付け審判は、元夫から元妻に対して按分割合を0.5とする年金分割が請求された事案について、その按分割合を0.3と判断しました(確定)。
その理由としては、①婚姻期間中、元妻が元夫の多額の負債等により家計に苦労したことや、②元夫が自分の借入金の大部分を退職金で返済したこと、などを考慮して、按分割合を30%と認めるのが相当であるとしました。
0.5と判断する裁判例が多い中で、0.3と判断した珍しい審判例です。
(弁護士村松いづみ)
2014-06-24掲載
(法律コラム:離婚)離婚を有利に進める方法(その4)~夫の給料明細をチェック!
離婚の時に問題となる財産分与。
同居中にしっかり相手の預金先をチェックしておく必要があることは「離婚を有利に進める方法(その3)」で書いたとおりです。
それとは別にもう1つ注意点があります。
夫が会社員や公務員の場合、
最近は、給与が銀行振込となっている職場が多いと思います。
「私が夫の給与振込口座を管理しているから大丈夫」と思っていませんか?
夫の給与明細書も見ていますか?
給与明細書のここをチェックしましょう!
●給与振込口座が2カ所になっていませんか?
←ちゃっかり第2口座で「へそくり」を作っているかも・・・
●給与天引き欄に「積立預金」や「生命保険」の天引きはありませんか?
←あなたの知らない「隠し預金」かも。
通帳に記帳されるのは、金額だけですので、給与明細書もきちんと見ることが大切ですね。
(弁護士村松いづみ)
2014-06-11掲載
(法律コラム:離婚)養育費はいつまでもらえるの?
離婚後、扶養を要する子どものために支払われる養育費。
何歳まで請求できるのでしょうか。
現在、家裁の実務では、原則、子どもが成人に達する月までという扱いになっています。
問題となるのは、高校卒業後も大学に進学するなど高等教育を受けている場合をどう考えるか、です。
判例は、扶養義務者の資力や学歴などの家庭環境を考慮し、その環境で大学進学が通常のことと考えられる場合には、大学卒業時までの扶養義務を認めています。
(弁護士村松いづみ)
2014-02-07掲載
(法律コラム:離婚)蒸発した夫(妻)と離婚したい。
夫(妻)が蒸発してしまった。
もうこんな相手とは離婚したい。
でも相手とは連絡がつかず、離婚届を書いてもらうこともできない。
そんなとき、相手の同意を得ずに離婚するためには、
どうしたらいいのでしょうか?
民法では、法定離婚原因の一つに、
「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(民法770Ⅰ③)
というものを規定しています。
つまり、配偶者が蒸発してから、3年以上経過すれば、離婚できるということです。
でも、離婚まで3年間も待つなんてできないですよね。
一刻も早く離婚したい!
残された人がそう思うのは、当然です。
ではそんなとき、どうするか。
民法は、もう一つ、法定離婚原因として
「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770Ⅰ⑤)
というものを規定しています。
したがって、
「配偶者が蒸発した」ことで、
夫婦の間に「婚姻を継続し難い重大な事由」が生じた、
と認められれば、裁判で離婚することができるのです。
通常、離婚するためには、
まず離婚調停を経ることが必要とされていますが、
相手方が蒸発等で見つからない場合には、
いきなり離婚訴訟を提起することができます。
裁判所が、一応再度相手方の所在を調査したうえで、
本当に所在不明ということが分かれば、
「公示送達」という方法で、訴状が相手方に届いたことにしてくれます。
その後、原告本人の尋問等を経て、
「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無を審理し、
判決となります。
私の経験した事案では、
蒸発から約1か月後に提訴し、
所在調査、公示送達、本人尋問を経て、
約半年後に離婚を認める判決を得ることができました。
配偶者の生死不明を3年間も待つよりも、
はるかに早いですね。
訴訟というと、長い時間がかかるイメージですが、
こういうときはむしろ、ずっと迅速に問題を解決してくれます。
配偶者の蒸発などという不誠実に悩まされる方に、
ぜひ知っていただきたい知識です。
(弁護士 日野田彰子)
2013-12-03掲載
(法律コラム:離婚・相続)家裁が変わる~新しい家事事件手続法のポイント(その2:調停での同席?)
先日、弁護士会の委員として、家事事件手続法に関する京都家庭裁判所との意見交換会に出席しました。
その席上、家裁側から、今後、調停の際、その手続きの説明については、原則として、双方当事者立会いのもとで行いたいとの提案がありました(実施は、2013年12月2日から)。
主な目的は、当事者が手続きの内容、進行予定、他方当事者の言い分や対立点を的確に理解して共通認識にすること、及び家裁への信頼を図ることです。
あくまで手続きや言い分などを調停委員が説明する場であって、当事者双方が同席して調停を進めるわけではありません。
しかし、例えば、DV事案の離婚調停や遺産分割調停でも鋭く感情的に対立している場合などは、たとえ手続きや対立点でも当事者が同席することが好ましくない、あるいは当事者に大きなストレスを与えることもあると思われます。
従って、とりわけ弁護士を代理人につけていない事件の当事者の方については、たとえ説明だけであっても、相手方と同席したくない場合には、調停委員に対し、はっきりその意思を伝えましょう。
同席を拒否したからと言って、何か不利益となることはありませんので、ご安心ください。
※「新しい家事事件手続法のポイント」(その1:申立書が相手方に送付される)は、2013年4月23日付け法律コラムに掲載しております。
(弁護士村松いづみ)
2013-11-22掲載
(法律コラム:離婚)別居中の夫が健康保険証を渡してくれない時
夫婦が不仲となって別居した後、自分や子どもが医者にかかろうとした時に、別居中の夫が健康保険証を渡してくれない、そんなことが時々あります。
以前は、健康保険証が1通しか発行されなかったため、夫の方も「自分も医者にかかる必要があるから」などと言って拒否する場合がありました。
そんな時、夫の職場に頼んで遠隔地証明を出してもらったりしたこともありました。
最近では、健康保険証もカードとなり、子どもも含めて家族一人一人の分が発行されるようになったので、保険証が1通しかないことに起因するトラブルは減ったと思います。
では、別居中の夫が嫌がらせで健康保険証を渡してくれない場合は、どうすればよいでしょうか。
自分や子どもを夫の扶養家族としているような場合、夫自らが職場に子どもを扶養から外す手続きをしてくれないと被扶養者から外れません。
しかし、嫌がらせで保険証を渡してくれないような夫にそのような行為はとうてい期待できません。
かような場合、夫からの手続きがされなくても、妻である被害者から、婦人相談所などが発行する配偶者からの暴力の被害を受けている旨の証明書や裁判所の保護命令、配偶者暴力相談支援センターなどが発行する証書などを添付して被扶養者から外れる旨の申し出がなされた場合には、被扶養者から外れることができます。
同伴者である子どもも同様です。
その上で、妻が国民健康保険に加入して子どもをその扶養家族にするなり、自分の社会保険の扶養家族にする手続きを取ってください。
暴力は、肉体的暴力に限られません。
保険証がないため、病院に行けない、あるいは実費で通院している、そんな場合もあると思います。
このような手続きを利用しましょう。
(弁護士村松いづみ)
2013-11-21掲載
(法律コラム:離婚)約2年の別居で離婚認めず(東京高裁)
離婚についての法律相談を受けていると、時々、離婚原因が「性格の不一致」や「価値観の相違」しかないケースがあります。
「性格の不一致」や「価値観の相違」という原因でも、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」がある場合には離婚は認められます。
「婚姻を継続し難い重大な事由」の判断の中には、「別居期間」も考慮されます。
では、何年くらい別居したら、裁判所は離婚を認めてくれるでしょうか。
裁判官によっても、事案によっても、一概には言えませんが、下記のような判例が1つの参考になります。
東京高裁平成25年4月25日判決は、別居期間が約2年になろうとしていた離婚事件で、別居は性格や価値観の相違が大きな要因であったと認定し、別居は突然で、改善の努力をしたが問題が解消されないというような事情がないなどと判断。
夫がまだ夫婦関係の継続を望んでいることも考慮し、妻の離婚請求を認めませんでした。
この事件で、妻は負け、夫は夫婦関係の継続を望んでいるわけですが、おそらく、妻は夫とやり直すことはないでしょう。
また、何年か別居して、離婚を求めるしかないですね。
ところで、「性格の不一致」しか原因がないから「離婚は無理」と思い込んでいる方もおられますが、弁護士がよくよく話を聞いてみると、「性格の不一致」を超えた原因がある場合もあります。
やはり弁護士などの専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。
(弁護士村松いづみ)
2013-10-24掲載
(法律コラム:離婚)有責配偶者の資産と離婚慰謝料の額
よく芸能人が離婚する場合、慰謝料の金額が何千万円とか何億円などという記事を目にします。
ただ、これらの数字は、実は、財産分与の額や養育費なども含まれていることもありますし、また合意をもとに慰謝料を決めた場合かもしれません。
ですから、いくら配偶者が資産家であっても、裁判所が芸能人なみに慰謝料を定めるわけではありません。
有責配偶者が金持ちであろうと貧乏であろうと、それだけでは他方配偶者の離婚によって受けた精神的苦痛に変わりはないはずです。
よって、現在の裁判所は、保有資産の額や給与の金額によって、(多少影響はあるかもしれませんが)大きく慰謝料の金額を変えることはしていません。
精神的苦痛を受けた側の感情からすれば、例えば1億円稼いでいる有責配偶者が仮に200万円の慰謝料を支払えと命じられても痛くもかゆくもなく、悔しいという思いがあるでしょう。
外国では、「制裁的慰謝料」「懲罰的慰謝料」などの考えをとっている国もあるようですし、日本でも学説では存在しますが、日本の裁判所は、離婚慰謝料に限らず、どの慰謝料についても、加害者の資産は大きな比重は占めていません。
(弁護士村松いづみ)
2013-08-07掲載
(法律コラム:離婚)離婚後婚姻時の姓を選んだが、旧姓に戻りたい
離婚する時、旧姓に戻るか、そのまま婚姻時の姓を名乗るか、迷う方もいらっしゃると思います。
離婚届を提出すると、一旦は旧姓に戻りますが、離婚から3ヶ月以内であれば、届出をするだけで、婚姻時の姓を続けて使うことができます(民法767条)。
ですから、迷う場合には、3ヶ月かけてゆっくり考えたらいいよとアドバイスします。
Aさんは、夫と離婚する際、子どもの姓をAさんの旧姓に戻すのなら離婚に応じないと言われ、子どもと別の姓になりたくなかったため、やむなく婚姻時の姓を選択しました。
離婚後、Aさんは、生活の中で元夫の姓を使いたくなかったため、日常生活や仕事関係において、旧姓を通称として使ってきました。
そんなAさんから「戸籍を正式に旧姓に変更できませんか?」という相談を受けました。
既に離婚から7年が経過しようとしていました。
1度婚姻時の姓を選んでしまったAさんが戸籍も旧姓に変えたい場合には、家庭裁判所の許可が必要です。そして、その場合、姓を変更する「やむを得ない事由」が要件となります(戸籍法107条)。
Aさんが使用してきた仕事上の名詞、年賀状などの手紙、子どもの学校からの保護者への文書など、長年にわたり日常的に旧姓を使い続けてきたという証拠を添えて申し立てを行いました。
その結果、家裁は、Aさんが戸籍上の姓を旧姓にすることを認めました。
姓や名前を変えることは簡単ではないと言われていますが、いろいろ過去の裁判例を調べてみると、婚姻時の姓を選んだ人が、その後、旧姓に変更することは要件も緩やかに解されているような気がします。
(弁護士村松いづみ)
2013-06-05掲載
(法律コラム・離婚)養育費が払われない時~履行勧告・履行命令
家庭裁判所の調停や審判、あるいは離婚訴訟の判決の中で養育費の金額が決まっても、義務者がそれに従わず、支払わない場合があります。
もちろん強制執行をすることもできますが、それは最後の手段として、まずは、相手(義務者)に対し支払いを促したいと考える場合もあります。
しかし、権利者から督促しても、義務者に感情的なしこりが残っている時など素直に応じない場合もあるようです。
そこで、家庭裁判所から支払いを促してもらう制度があります。
1つは、履行勧告という方法です。
これは、権利者が申し出れば、当該裁判をした家庭裁判所が履行状況を調査し、義務者に対し、その履行を勧告してくれます。
2つ目は、履行命令という方法です。
家裁は、権利者の申し立てにより、義務者に対し、相当な期限を定めて義務の履行をすべきことを命じるものです。義務者が正当な理由なくその命令に従わないときには過料の制裁もあります。
養育費の取り決めの方法について、「家裁の調停の方がいいですか?公正証書の方がいいですか?」という相談を受けることがあります。
調停調書でも公正証書でも法的な効力はどちらも同じです。
元夫婦の間で金額の合意さえできていれば、公正証書の方が時間的には早く作成してもらえますが、上記のような履行勧告や履行命令を利用できるということを考えれば、家裁で取り決めた方が良いと思います。
(弁護士村松いづみ)
2013-06-04掲載