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(法律コラム:その他)DNA鑑定で血縁がないと分かった場合の父と子は?
最高裁で、判例変更される可能性が出てきました。
DNA鑑定で血縁がないとわかった場合、法律上の父親と子どもとの関係は取り消すことができるでしょうか?
何ヶ月か前、芸能人の大澤樹生がDNA鑑定により息子との血縁がなかったことが判明したということが芸能ニュースになっていましたね。
過去、最高裁は、子どもの身分関係の法的安定を保持する必要から、嫡出否認の訴えを提起しうる期間(夫が子の出生を知った時から1年以内)の経過後に、父子関係を争うことはできないとしてきました(平成12年3月14日判決)。
しかし、最高裁は、今年6月9日、1・2審判決がいずれも父子関係を取り消した、大阪と北海道の2つの事件について、弁論を開きました。
弁論が開かれるということは、最高裁判例が見直される可能性があることを意味しています。
DNA鑑定の技術は、民法が制定された頃には考えられないほど向上しています。
最高裁が、7月17日、どのような判断を示すか注目されます。
(弁護士村松いづみ)
2014-06-11掲載
(最新判例:その他)福島からの自主避難に賠償金仮払い(京都地裁)
福井地裁の大飯原発訴訟判決の1日前の5月20日、福島の原発事故で福島県内から京都市内に自主避難し、東京電力に損害賠償を求めて京都地裁へ提訴した40代男性が「仮払いがないと生活を維持できない」として賠償金の仮払いを申し立てた仮処分決定で、京都地裁が東電に月額40万円の支払いを命じました(京都新聞2014年5月26日朝刊)。
原発事故賠償で裁判所が避難者への仮払いを命じる仮処分決定を出すのは全国初です。
東電は、文部科学省の原子力損害賠償審査会の指針で損害項目に就労不能損害が挙がっておらず「因果関係」なしと主張していました。
これに対し、決定では、「個別具体的な事情に応じて因果関係を認め得る」とし「自主避難の損害と事故の因果関係は事案ごとに判断すべき」と指摘しました。
その上で、申立男性が事故が原因で精神疾患になったとし、休業損害を認めました。
生活を維持するため、泣く泣く低い賠償額で我慢している被災者の方もたくさんおられることでしょう。
裁判所は、これら被災者の方の生活実態を十分見つめてほしいと強く思います。
(弁護士村松いづみ)
2014-05-27掲載
(最新判例:その他)大飯原発再稼働の差し止めを認める!(福井地裁)
2014年5月21日、福井地裁前には「司法は生きていた」という垂れ幕が掲げられた。
福井県内外の住民189人が関西電力大飯原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた訴訟で、福井地裁は、「運転してはならない」と命じた。
判決要旨全文は、下記のサイトで読むことができる。
【速報】大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文を掲載します
判決全文は、下記のサイトで読むことができる。
http://www.cnic.jp/5851
何度読んでも、素晴らしい判決だ。
「人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない」
とし、
「原子力発電所の稼働は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである」
まさに憲法の人権保障の原点に立ち返って論じている。
福島原発事故によって
「原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは・・・十分に明らかになったといえる」
とし、
「地震大国日本において、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない」
と断じている。
そして
「被告は本件原発の稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的に許されないと考えている」
「コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」
本当に、まだ「司法は生きていた」ことを実感した。
是非、判決(要旨でも)を読んでみてほしい。
(弁護士村松いづみ)
2014-05-26掲載
(最新判例:その他)「プラトニック不倫」でも損害賠償義務あり(大阪地裁)
一線を超えない「プラトニック」な関係を貫いても、やはり代償は必要でした。
夫と親密な関係になり精神的苦痛を受けたとして、大阪府内の女性が、夫の同僚女性に220万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は、本年3月、44万円の支払いを命じました(2014年4月9日付け産経新聞)。
配偶者が浮気(不貞行為)をした場合、浮気相手に対しても慰謝料を請求することができます。
その場合の「不貞行為」とは、自由な意思にもとづいて配偶者以外の異性と性交渉を行うことを言うとされています。
では、性交渉にさえ至らなければ、損害賠償義務はないのでしょうか。
手をつなぐ、キスをする、抱き合う、頻繁にデートをする・・・このような行為は、どうでしょうか?
上記の大阪地裁判決は、夫と同僚女性の肉体関係こそ認定しませんでしたが、「逢瀬」を重ねたことを「社会通念上、相当な男女の関係を超えたものと言わざるをえない」と指摘し、損害賠償を認めたようです。
おそらく裁判官は、この二人の関係はかなり怪しいと思ったのでしょうが、「黒」と認定するまでの証拠がなかったことから、「グレー」の判決をしたんでしょうね。
私たち弁護士は、「不貞行為」までに至らない行為を「不適切行為」と呼んだりしています。
たとえ、プラトニックであっても、代償は伴うものですね。
(弁護士村松いづみ)
2014-04-14掲載
(最新判例:その他)実親不同意でも特別養子縁組(宇都宮家裁)
宇都宮家裁で、特別養子縁組に関する
画期的決定がなされました。
(2月10日決定、4月2日確定)
特別養子縁組は、世間ではあまり知られていません。
家の存続などのために行われる普通養子縁組と異なり、
特別養子縁組は子どもの福祉のために行われるものです。
実親との法律上の親子関係はなくなり、
養親との間で、完全な法律上の親子関係が成立します。
ですので、たとえば、子どもは原則6歳以下でなければならなかったり、
実親の同意が必要であったりと、厳格な制約が課されているのです。
しかし、特にこの「実親の同意」がネックとなって、
特別養子縁組の利用が進んでいないと言われています。
つまり、子どものためにはどう考えても、特別養子縁組が望ましい、
しかし実親がどうしても縁組に同意しない、
そうして縁組の機会を奪われている子どもが、非常に多いのです。
民法上は、
・父母がその意思を表示することができない場合
・父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合
には、実親の同意は不要とされていますが、
実際には、虐待などが明らかな場合でなければ、
実親の同意を要求するのが実務上の取扱いでした。
けれども、
子どもを施設に預けっぱなしで、
面会にも行かない、
自分で育てるつもりもない、
しかし子どもとの縁は切りたくないから、縁組にも同意しない・・・
そういう実親がいた場合、不利益を受けるのは子どもたちです。
縁組により、両親のいる温かい家庭で育ててもらうという機会を
奪われてしまう子どもたちなのです。
今回のケースでは、
子どもは生後まもなくから7年間、里親のもとで生育されており、
実親との交流は全くなかったというケースで、
実親からの明確な虐待などはないが、
子どものためには、里親との間で法律上の親子関係を築くのが
子どもの福祉に資する、
逆にいえば、里親と引き離すことが
「養子となる者の利益を著しく害する」場合に該当すると
判断されたもののようです。
血のつながりより心のつながりを重視したと、そういうことでしょう。
宇都宮家裁の決定は、
特別養子縁組が、本来子どもの福祉のための制度であるという
制度趣旨に立ち返り、
明確な虐待等がない場合であっても
実親の同意を不要と判断したもので、
本当に画期的な決定です。
この決定が実務に良い影響を与え、
特別養子縁組の利用が、
もっともっと促進されていくことを強く期待します。
(弁護士 日野田 彰子)
2014-04-11掲載
(法律コラム・その他)生活保護の申請は、口頭でもOKです。
生活保護の申請をする場合、役所にある申請書がないと申請できないと思っていませんか?
本来、申請というのは、その人の「意思」が相手に伝わればいいのですから、口頭でもできるはずです。
先日、京都府舞鶴市の生活保護申請に関する再審査請求で、口頭での申請を認める内容の厚生労働大臣の裁決が下されました。
この男性は、病気で働けないため、舞鶴市福祉事務所に生活保護を受けたいと伝えました。
しかし、福祉事務所は、申請書を渡さず、就労を指導。
男性がその後、医師の診断書を持参して再三足を運んだにもかかわらず、申請書を渡したのは、2ヶ月以上経ってからでした。
しかし、口頭の申請も認められるとする裁判例もいくつか出ています。(福岡地裁小倉支部平成23年3月29日判決、さいたま地裁平成25年2月20日判決)。
また、仮に申請書で申請する場合でも、役所が交付する申請書でなくても、必要事項が記載されている申請書であれば、それでもかまいません。
厚生労働省は、「申請は非要式行為であり、申請意思が明確なら口頭の申請も可能」と答弁しています。
行政がきちんと対応することを強く求めます。
(弁護士村松いづみ)
2014-02-28掲載
(最新判例:その他)銀行口座に振り込まれた児童手当の差押えは違法(広島高裁松江支部判決)
2013年3月29日、鳥取地方裁判所は、児童手当(差押禁止財産)が振り込まれた預金口座に対し、鳥取県が税金の滞納処分として行った差押えを違法とする画期的な判決を下しました。
そして、昨年11月、控訴審の広島高裁松江支部も同じく違法と判断し、この判決は確定しました。
児童手当法は「児童手当の支給を受ける権利は差し押さえることはできない」(15条)と定め、子ども達のため児童手当を確実に受け取れるように保護しています。
この規定により、仮に税金を滞納している人に対しても、行政は、直接、この児童手当を差し押さえることはできません。
そこで、鳥取県は、児童手当が本人の銀行口座に入金されるのを待って、これを狙って差押えを行ったわけです。
その理屈は「『児童手当の支給を受ける権利』は差押え禁止だけど、児童手当が銀行口座に入金されて預金となった後は『預金の払い戻しを求める権利』へと変化するから差押えは許される」というものです。
確かに、債権者である金融機関が、差押え禁止財産である国民年金・労災保険金が振り込まれる債権者の預金口座から相殺したことを有効した最高裁判例があります(1998年2月10日)。
しかし、この最高裁のケースは、預金の中に差押禁止財産と一般財産とが混在し、差押え禁止財産を識別・特定することが難しい事例でした。
今回の鳥取の裁判では、行政が預金口座に児童手当が振り込まれる可能性が高いことは十分認識できたとし、預金口座の金も児童手当がほとんどだったと判断し、差押えは権限を濫用した違法なものという結論を下したわけです。
行政による問題のある差押えは、年金支給後の預金口座への狙い撃ちなど全国各地でなされています。
総務省は、高裁判決を受けて、全国の自治体に通知を発しました。
この判決を生かして、違法な税金徴収が是正されるようにしましょう。
(弁護士村松いづみ)
2014-01-23掲載
(最新法令)恋人からの暴力にもDV法が適用に(1月3日施行)
同居する恋人間の暴力にもDV法が適用されるという法改正が昨年成立し、今年1月3日から施行されています。
恋人間の暴力「デートDV」が10~20代を中心に深刻化していることが背景にあります。
ただ、改正法は、「デートDV」の中でも客観敵に判断しやすい「同居」を条件としている点で不十分なところもあります。
(弁護士村松いづみ)
2014-01-15掲載
(最新判例:その他)認知した父親も認知の無効を請求可能(最高裁)
最近、親子関係をめぐって、最高裁が次々と新判例を出していますね。
今回は、血縁関係のない子を認知した父親が、自ら認知の無効を請求できるかどうかが争われた事件で、最高裁は、1月14日、「認知する事情はさまざまで、無効の主張が一切許されないわけではない」との初判断を示しました。
民法785条は「認知をした父は、その認知を取り消すことができない」と定めています。
他方、786条では、「子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる」と定められています。
この2つの条文をどう解釈するかが争点となっていました。
今回、最高裁は、「父親は利害関係人に当たり、無効主張ができる」という初めての判断を示したわけです。
(弁護士村松いづみ)
2014-01-15掲載
(法律コラム・その他)父と子との親子関係について
離婚した芸能人元夫婦の子どもと父親とのDNA鑑定結果が話題となっています。
16年間育てた子どもとのDNA鑑定を父親が行ったところ、親子の確率は「0%」だったそうです。
最近のDNA鑑定の精度はかなり高いと言われていますので、このような結果を得た場合、父親は子どもとの親子関係を否定することはできないのでしょうか?
民法772条は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」「婚姻の成立の日から200日を経過した後に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と規定しています。
更に、民法777条は、「嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない」と規定しています。
これは、子どもの法的な地位を早期に安定させるという立法趣旨です。
よって、上記のケースでは子どもが生まれてから既に16年以上が経過しているようですから、嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認訴訟などによって父子関係を否定することはできません。
ただ、例外として親子関係不存在確認訴訟で争うことができる場合があります。
例えば、妻が夫の子を懐胎すべき時期に既に夫婦関係が事実上の離婚状態で夫婦の実体が失われていた場合、遠隔地に居住して夫婦関係に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合です(最高裁平成12年3月14日判決)。
弁護士 村松いづみ
2014-01-07掲載