その他- 法律コラム -
(最新判例:その他)携帯電話の基地局から出る電磁波と健康被害
「携帯電話の基地局から出る電磁波と、耳鳴りや頭痛などの症状には因果関係は認められない」
2012年10月17日、宮崎県延岡市の住民30人が健康悪化を理由に、KDDIに基地局の操業差し止めを求めた訴訟の判決があり、宮崎地裁延岡支部は、住民側の訴えを退けた(2012年10月17日朝日新聞デジタル)。
基地局をめぐり、実際に健康被害が出ていることを理由にした訴訟は全国で初めて。
判決は、原告らに耳鳴りや頭痛などの症状が発生したことを、同種の訴訟では初めて認めたが、電磁波と健康被害の因果関係の科学的立証は不十分だと判断した。
他方、世界保健機構(WHO)の国際ガン研究機関は、昨年5月31日、携帯電話の電磁波とガン発症の関連性について、「聴神経腫瘍や(脳腫瘍の一種である)神経膠腫の危険性が限定的ながら認められる」との調査結果を発表している。
携帯電話の電磁波、基地局の電磁波などと健康被害との関係も、原発と同じく、長期間の「人体実験」によらなければ判明しないのだろうか。
(弁護士村松いづみ)
2012-10-18掲載
(最新法令:その他)外国人にも住民票が作成されます
わが国に入国・在留する外国人が年々増加していること等を背景に、昨年、「住民基本台帳法の一部を改正する法律」が国会で成立し、今年7月9日から施行されています。
これにより、外国人住民の方にも住民票が作成されるようになります。
国は、基本的な考え方として、観光などの短期滞在者等を除いた、適法に3ヶ月を超えて在留する外国人であって住所を有する者について住民票を作成することとしています。
(弁護士 村松いづみ)
2012-07-31掲載
(最新判例)携帯解約金訴訟、一部無効判決(京都地裁)
KDDI(au)の携帯電話の2年契約の割引プランで、中途解約すると違約金9975円を請求されるという契約条項は消費者契約法に違反し無効だとして、NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」が条項の使用差し止めなどを求めた訴訟の判決が、7月19日、京都地裁でありました(2012年7月20日付け京都新聞朝刊)。
判決は、2年間の契約のうち、最後の2カ月間に解約した場合は、KDDIの損害より解約金の方が高すぎるとして、「条項は、消費者の利益を一方的に害する」とその違法性を認め、条項の使用の差し止めを命じたほか、解約金の一部についても返還するよう命じました。
中途解約時の違約金を定めた条項の無効判決は全国で初めてで、消費者の不満が反映された判決となりました。
KDDIの割引プランは、3月末現在、3500万人の利用者のうち、8割が加入しており、判決が与える影響には大きなものがあります。
実は、京都地裁では、今年3月に、NTTドコモの同種条項を有効とした判決が下されています。
また、同種のプランを持つ他社でも現在係争中の裁判があります。
今後の裁判の行方が注目されます。
(弁護士村松いづみ)
2012-07-19掲載
(法律コラム・その他)京都市成年後見制度利用支援事業
高齢化社会の下、今後、認知症などのために成年後見制度の利用が必要な方が増えてくると予想されます。
しかし、中には、後見等の申立をしたくても、財産が乏しく、申立費用や後見人の報酬の負担が経済的に困難な方も存在します。
そのような方のために、京都市では、本人または親族による成年後見申立の場合にも、申立費用や後見人の報酬を支給するという制度を平成24年4月から実施しています。
ただし、後見人等が、本人の配偶者、直径血族、兄弟姉妹の場合は対象外となります。
支給要件は、
(1)生活保護を受けている方
(2)中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律による支援給付を受けている方
(3)収入・資産等の状況から生活保護を受けている方に準ずる方で、以下の①から③の全てを満たす方
①市民税非課税世帯(世帯員全員が非課税)
②預貯金の額が、単身世帯で240万円以下、世帯員が1人増えるごとに96万円を加算した額
③世帯員が居住する家屋その他日常に必要な資産以外に活用できる資産がないこと
お問い合わせ先は
(高齢者担当)京都市保険福祉局長寿社会部長寿福祉課:075-251-1106
(障害のある方)同局障害保険福祉推進室:075-222-4161
(弁護士村松いづみ)
2012-07-18掲載
(最新法令:その他)「原発事故子ども・被災者支援法」が成立しました
2012年6月21日、「原発事故子ども・被災者支援法」が成立しました。
この法律は、日本弁護士連合会の提案を踏まえた立法で、その成立は、福島原子力発電所事故被害者の人間の復興のための第一歩として高く評価できるものです。
しかし、具体的な施策については、今後政府の計画や政令等で定められることになりますので、今後、積極的に声をあげていくことが求められます。
主な内容は、以下のとおりです。
① 支援対象者
福島県の避難地域だけでなく、一定量の線量が観測される地域の住民。政府が言う「年間20mSv」ではなく、もっと低い地域も救済の対象となります。自主避難者も対象となります。
② 子ども(被爆当時、胎児も含まれます)や妊婦の医療費
国の財源で免除または減額されます。また、被爆の可能性がある子どもの健康診断が生涯にわたって実施されます。
(弁護士 村松いづみ)
2012-07-09掲載
(法律コラム:その他)カルテの開示
1、カルテの開示は、患者の権利です。
2005年4月から個人情報保護法25条により、カルテ開示が初めて法的義務となり、患者は、医療機関に対し、自分のカルテを開示するよう求めることができるようになりました。
カルテには、自分の病名や症状、治療内容、処方された薬の名前などが書いてありますので、自分の病気を理解することができ、また別の医者の意見も聞きやすくなります。
法が適用されるのは、5000人以上のカルテがある医療機関ですが、厚生労働省は、小規模であっても、開示請求があれば応じるよう求めています。
未だに「弁護士の請求書面を持って来てください」などと言う大病院があるようですが、それは全く間違いです。
開示を求める理由も言う必要はありません。
2、手続きや費用は?
これは、各医療機関が決めることができるので、その医療機関に問い合わせてください。
ただ、過去に、あまりにも高額な手数料を求める医療機関があったため、厚生労働省は「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内の額としなければならない」との内容を指針に明記しました。
3、カルテの保存期間
カルテの保存期間の義務は5年です(医師法24条)。
病院によっては、5年過ぎていても残している所もあるようですが、請求したい場合には、5年以内にした方がよいですね。
(弁護士 村松いづみ)
2012-07-06掲載
(法律コラム・その他)亡夫の両親との関係
夫が死亡した場合、婚姻は解消となり、妻は再婚が可能となります。
夫の遺産については、再婚してももちろん相続できます。
しかし、夫の両親(義父母)の遺産については、妻には相続権はありません。
これは、たとえ、夫亡き後も彼らと同居し、扶養をしている場合でも同じです。
遺産をもらうには、遺言を書いてもらうことが必要となります。
ところで、妻は、夫の死亡後も義父母の面倒をみなければならない義務があるでしょうか。
妻と義父母とは「姻族」の関係にあります。
彼らを扶養する義務は、姻族である「嫁」よりも、まず彼らの子どもである夫の兄弟姉妹にありますから、普通は面倒をみる必要はありません。
しかし、義父母に夫以外の子どもがいないような場合には、申立によって家庭裁判所が妻に対し扶養義務を負わせることもあります。
妻と義父母の姻族関係は、夫が死亡しても続きます。
関係を絶ちたいと思う時には、「姻族関係終了届」を役所に提出します。
姻族関係がなくなれば、前記した、義父母を扶養する義務を負う可能性もなくなります。
(弁護士村松いづみ)
2012-06-13掲載
(法律コラム:その他)貸した金を返してほしい
金を貸した相手から「返す」「返す」と言われても、実際に返済がないと、本当に返す意思があるかどうか不安になりますね。
借用書があれば、それにもとづいて調停や訴訟などの法的手段をとることができます。
借用書がなくても、金の貸し借りの契約は成立しているのですが、借り主が「このまま、あいまいになれば」などと考えているかもしれません。
とりあえず、借り主に会って、便せんなどの用紙でもかまいませんので、「いつ、いくら返済する」という念書を書いてもらいましょう。
その際、日付、署名、押印を忘れないように。
放置しておくと、10年で時効となり請求権がなくなる可能性がありますから、注意してください。
(弁護士村松いづみ)
2012-05-31掲載
(法律コラム:その他)婚約破棄と責任
婚約が成立しても、結婚に至るまでの間に婚約破棄となることがあります。
気持ちが変わった時、結婚を強制することはできませんから、婚約については一方的な破棄は可能です。
しかし、一方的な破棄が可能とは言っても、その破棄に正当な理由がない場合には、相手方に生じた財産上あるいは精神的な損害を賠償する義務が発生します。
正当な理由とは、相手が浮気をした場合をはじめ将来結婚を維持できないような生活態度があらわれた場合などがあたります。
ただし、離婚の場合よりは広く解釈されています。
損害としては、慰謝料以外には、結婚式などを中止することによって生じた損害も賠償の対象となります。
(弁護士 村松いづみ)
2012-05-25掲載
(最新判例)婚外子区別 違憲の疑い(東京地裁)
嫡出子と非嫡出子とを区別する取り扱いについて、また判決が出ました。
出生届の記載で、嫡出子か非嫡出子(婚外子)かの区別をするよう義務付けた戸籍法の規定の適否が争われた訴訟の判決で、東京地裁は、4月26日、原告の国家賠償請求自体は認めず敗訴としましたが、規定については「差別を助長するとの見方があり、撤廃しないことに憲法上の疑義がある」との判断を示しました(2012年4月27日付け京都新聞朝刊)。
当事務所の「(法律コラム:相続・遺言)非嫡出子の相続分差別」の項でも紹介しましたが、嫡出子か否かについては子ども自身には責任はなく、現在では、合理性がないという意識が高まっています。
判決は、戸籍法の規定について「出生届に非嫡出子かどうかの別を表示する必要性は高くなく、記載義務付けが合理的とは言い切れない」と指摘。親の婚姻の有無で子どもの法定相続を区分する民法の規定も「子どもが自分の意志や努力で変えられない事柄に基づいており、違憲の疑いが生じている」と判示しました。
(弁護士村松いづみ)
2012-04-27掲載