(法律コラム:離婚)蒸発した夫(妻)と離婚したい。
夫(妻)が蒸発してしまった。
もうこんな相手とは離婚したい。
でも相手とは連絡がつかず、離婚届を書いてもらうこともできない。
そんなとき、相手の同意を得ずに離婚するためには、
どうしたらいいのでしょうか?
民法では、法定離婚原因の一つに、
「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(民法770Ⅰ③)
というものを規定しています。
つまり、配偶者が蒸発してから、3年以上経過すれば、離婚できるということです。
でも、離婚まで3年間も待つなんてできないですよね。
一刻も早く離婚したい!
残された人がそう思うのは、当然です。
ではそんなとき、どうするか。
民法は、もう一つ、法定離婚原因として
「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770Ⅰ⑤)
というものを規定しています。
したがって、
「配偶者が蒸発した」ことで、
夫婦の間に「婚姻を継続し難い重大な事由」が生じた、
と認められれば、裁判で離婚することができるのです。
通常、離婚するためには、
まず離婚調停を経ることが必要とされていますが、
相手方が蒸発等で見つからない場合には、
いきなり離婚訴訟を提起することができます。
裁判所が、一応再度相手方の所在を調査したうえで、
本当に所在不明ということが分かれば、
「公示送達」という方法で、訴状が相手方に届いたことにしてくれます。
その後、原告本人の尋問等を経て、
「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無を審理し、
判決となります。
私の経験した事案では、
蒸発から約1か月後に提訴し、
所在調査、公示送達、本人尋問を経て、
約半年後に離婚を認める判決を得ることができました。
配偶者の生死不明を3年間も待つよりも、
はるかに早いですね。
訴訟というと、長い時間がかかるイメージですが、
こういうときはむしろ、ずっと迅速に問題を解決してくれます。
配偶者の蒸発などという不誠実に悩まされる方に、
ぜひ知っていただきたい知識です。
(弁護士 日野田彰子)