(法律コラム:離婚)有責配偶者である夫からの離婚請求訴訟で、妻側勝訴の判決を獲得しました(確定)

 

ある離婚事件の報告です。
不貞行為を行った有責配偶者である夫から離婚訴訟が提起され、私は妻の代理人として訴訟に関わってきました。

 

今年になって、第一審、控訴審のいずれにおいても妻側勝訴の判決(=夫からの離婚請求が認められなかった)を獲得しました(確定)。

 

有責配偶者からの離婚請求の判決としては、1987(昭和62)年の最高裁判決がリーディングケースとされています。
最高裁判決は、有責配偶者からの離婚請求を認めるための考慮要因としては、
①相当長期間の別居期間
②未成熟な子が存在しないこと
③特段の事情
をあげています。

しかし、「有責配偶者からの離婚請求」と一言で言っても、別居期間や子どもの年齢、夫婦それぞれの状況は事件毎によって全く異なります。
その意味で、1987年の最高裁判決以降も、下級審で、この種事案のたくさんの判決が下されています。

 

本件は、夫婦が、子どもの学業のため、話し合って、妻と子は夫の住む自宅とは別の地で長く生活し(その間、夫婦の行き来やメールでのやりとりなどはありました)、その不在中に、夫が性風俗店の女性と不貞行為を行ったという事案でした。
判決は、別居期間を、夫が離婚調停を申し立てた時を起算点として約2年8ヶ月(高裁判決)と認定しました。
子どもは既に成人となっていましたが、特段の事情として、妻が病弱なことや経済的な状況などを考慮してくれました。

 

夫は、不貞行為前に夫婦関係は既に破綻していたなどと主張しましたが、夫婦の間で家族の情愛が感じられるメールや写真が多数残されており、それを証拠として提出することができました。
両判決とも「情愛に満ちたメールを頻繁に交換し合っていた」と認定してくれました。
また、夫の不貞行為の相手の女性の名前などはわかりませんでしたが、特定の女性であったという認定もされました。

 

このように書くと、簡単な事件であったかのように思われるかもしれませんが、夫婦が長い間離れて暮らしていたこと、不貞行為をどのように立証するか、夫の妻に対する悪口への反論などなど、依頼者の方と何度も打ち合わせをしながら、訴訟を進めました。

 

離婚したくない、という依頼者の方の気持ちに沿えた判決を得ることがてき、ホッとしています。

 

(弁護士村松いづみ)