(法律コラム:離婚)別居中の夫が健康保険証を渡してくれない時

 

夫婦が不仲となって別居した後、自分や子どもが医者にかかろうとした時に、別居中の夫が健康保険証を渡してくれない、そんなことが時々あります。

 

以前は、健康保険証が1通しか発行されなかったため、夫の方も「自分も医者にかかる必要があるから」などと言って拒否する場合がありました。

そんな時、夫の職場に頼んで遠隔地証明を出してもらったりしたこともありました。

 

最近では、健康保険証もカードとなり、子どもも含めて家族一人一人の分が発行されるようになったので、保険証が1通しかないことに起因するトラブルは減ったと思います。

 

では、別居中の夫が嫌がらせで健康保険証を渡してくれない場合は、どうすればよいでしょうか。

自分や子どもを夫の扶養家族としているような場合、夫自らが職場に子どもを扶養から外す手続きをしてくれないと被扶養者から外れません。

しかし、嫌がらせで保険証を渡してくれないような夫にそのような行為はとうてい期待できません。

かような場合、夫からの手続きがされなくても、妻である被害者から、婦人相談所などが発行する配偶者からの暴力の被害を受けている旨の証明書や裁判所の保護命令、配偶者暴力相談支援センターなどが発行する証書などを添付して被扶養者から外れる旨の申し出がなされた場合には、被扶養者から外れることができます。

同伴者である子どもも同様です。

その上で、妻が国民健康保険に加入して子どもをその扶養家族にするなり、自分の社会保険の扶養家族にする手続きを取ってください。

 

暴力は、肉体的暴力に限られません。

保険証がないため、病院に行けない、あるいは実費で通院している、そんな場合もあると思います。

このような手続きを利用しましょう。

 

(弁護士村松いづみ)