(法律コラム:離婚)事情変更を理由に婚姻費用を減額するには十分な審理が尽くされていないとして原審に差し戻した事例(東京高裁)
家庭裁判所の調停や審判で、婚姻費用が決められても、失業、病気、事故、転職による昇給などにより夫または妻の収入が増減したり、子どもの教育費が増加するなど事情に変更が生じたときは、家庭裁判所は、婚姻費用の変更を命じることができます。
今回、ご紹介する判例は、義務者の年収が485万5020円から424万7386円に減収となったという理由で減額請求がされ、原審は請求を認めて、それまでの月10万円から7万円に減額しましたが、東京高裁平成26年11月26日決定は、「未だ十分な審理が尽くされていない」として原審に差し戻ししました。
東京高裁は、一般論として「その審判が確定した当時に予測できなかった後発的な事情の発生により、その審判の内容をそのまま維持させることが一方の当事者に著しく酷であって客観的に当事者間の衡平を害する結果となると認められる例外的な場合に限って許される」と判示しました。
その上で、本件は、
①減収額が約60万円で、これは12.5%にあたり、大幅な減収ではないこと
②権利者の収入が減収していること
③子どもらに定期的な収入があるか否か、誰と居住しているか
④減収は予測できたか否か
などについて、原審において十分な審理が尽くされていないとして、差し戻しました。
このように、収入が減ったからと言って、その一事をもって、直ちに変更が認められるものではないことを念頭におきましょう。
(弁護士村松いづみ)