(法律コラム:離婚)不貞行為の慰謝料(その2)(「家庭の法と裁判」2017年11号)

 

2017年7月31日の(法律コラム:離婚:不貞行為の慰謝料)の続きです。

「家庭の法と裁判」2017年11号に、同年10号に引き続いて、平成27年10月から平成28年9月までの1年間に東京地裁で言い渡された不貞行為の慰謝料に関する裁判例123件の分析が掲載されました。

 

今回は、どのような事実があれば不貞行為が認定できるか等が内容で、この種事件の核心的部分だと思われます。

週刊誌をにぎわせた芸能人や政治家らは、一緒にホテルの部屋で過ごしても、「一線は越えていない」「不倫関係にはない」と言ったりしていましたが、訴訟の場で裁判所はどのような認定をしているのでしょうか。

 

①配偶者の自白

配偶者の自白を証拠として認定したケースは、21件中9件あり、不貞認定の有力な証拠となっていることがうかがわれます。しかし、他方、配偶者の自白があるにもかかわらず認定しなかったケースが13件中7件あることから、自白していても当然に不貞行為が推認されるわけではありません。

なぜなら、不貞を疑われる行為をした方は、負い目や、あるいはその場を収めるために、認めてしまうということもあるからです。

 

②LINE・メール等

これらが不貞行為を疑わせる証拠として提出されるケースは増えているように思われます。

しかし、そのやりとりの内容が重要です。

例えば、メールで「愛してるよ」「大好きだよ」との記載があっても、同じ内容を被告以外の者にも送っているような事案では、不貞行為を推認することはできないとする判例があります。

また、メールにより不貞行為を認定した判例も、そのメールだけではなく、そのほかの不貞を推認させる事実を加えて認定しています。

 

③興信所・探偵者の調査

調査結果が証拠として提出されても、不貞行為が認められないとした事例が13件中2件ありました。

この2つは、いずれも配偶者の単身赴任先や相手方の自宅などを他方が訪問しているケースで、宿泊していないことなどから、他の目的による滞在ということも考えられることが可能な事案でした。

他方、通常、ラブホテルへの数時間の滞在については、不貞をしていると推認できる経験則があると判例は見ているようです。

 

④2人で外泊

遠隔地の旅館に同宿したという場合には、一般に不貞行為が推定されると考えられます。

 

⑤疑わしい行動(深夜帰宅等)

これだけで認定されるのは難しいです。

 

⑥疑わせる行為の現認

相手方の反論、弁解に合理性がない限り、認定されてもやむを得ないと判断されています。

 

(雑感)

相談に来られた方から「こんな証拠で勝てますか?」と聞かれることが割とあります。

実際に扱った事件の経験や過去の判例から回答はしますが、最終的には担当した裁判官の総合判断ということになるでしょう。とりわけ微妙な証拠の場合には。

でも、証拠として不十分でも、今後、これ以上新たに証拠を入手する可能性がなければ、それで損害賠償の請求するかどうかは、最終的にはご本人が決めることですね。