(法律コラム:離婚)不貞行為と「一線を越えていない」という言い訳

 

最近、相次いで週刊誌にフライデーされた、今井絵理子参議院議員と橋本神戸市議、そしてお笑い芸人宮迫博之と複数女性との不倫疑惑報道。

 

どちらの件もホテルで同室して過ごしたにもかかわらず、「一線を越えていない」という記者会見。

いったい「一線」って何?

 

配偶者が不貞行為を行った場合には、配偶者に対しては離婚や慰謝料を、相手方に対しては、慰謝料を請求することができる。

民法の解説書には、「不貞行為とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性交渉を行うことをいう」と書かれてある。

だから、法的には「一線」とは「性交渉を行ったか否か」ということになる。

しかし、実際、「性交渉を行っている現場」を証拠として提出することはきわめて難しいので、訴訟となった場合、裁判官が不貞行為を認定する時には、配偶者とその相手との間にどのような外形的事実の証拠があるかで判断する。

いくら疑惑のある当事者が「一線を越えていない」と言い張っても、裁判官は、様々な外形的事実を経験則にあてはめて不貞行為が成立するか否かを判断するのである。

 

私が、これまでに、妻側の代理人として、不貞行為の相手女性に対し慰謝料を求めたいくつかの事件。

 

まず、慰謝料を求める内容証明郵便を出す。

(相手方の回答)「一線は越えていけないと考えていた」「不貞行為と言われるような事実はない」←全面否定。

 

やむなく、訴訟提起。

(相手方の答弁)「付き合っていたが、肉体関係はない」「ホテルに宿泊したことは認めるが、肉体関係を含むような男女関係はない」←どこかで聞いたような言い訳。

 

メール・手紙・写真・ホテル利用・相手方の自宅への深夜訪問などの証拠を提出

(相手方の主張)「ホテルでは、一緒に食事をして、映画を観て、ゲームをして、別々のベッドで寝た」「自宅へは食事に来ていただけ」←往生際が悪い!

 

審理の結果、判決は「不貞関係は明らか」と認定。

 

私の実感としては、ホテルの同室で過ごせば、訴訟上は、オフホワイトなんかじゃなく、もうブラックですね。

 

(弁護士村松いづみ)