(法律コラム:少年・刑事)刑事手続の流れと弁護活動について③
今回は、起訴後の刑事手続きの流れと弁護活動についてお話します。被疑者は起訴されると被告人と呼ばれ公判期日を待つことになります。第1回公判期日は、起訴されてから約1カ月後に指定されます。
(保釈請求について)
被告人が起訴された時に弁護人が行う弁護活動として保釈請求が挙げられます。保釈請求には、権利保釈(刑事訴訟法89条)と裁量保釈(同90条)があります。権利保釈は、法律上定められた要件(保釈を認めない場合の要件)に該当しなければ被告人の権利として保釈が認められる場合を言います。同法89条で最も問題となるのが同条4号の「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」です。同条4号については、「刑事手続きの流れと弁護活動②」で詳しくお話した勾留決定や勾留延長と同じような主張をしていくことになります。但し、起訴後という状況は当然加味され、また、保釈保証金を裁判所に納めますので、保釈請求による釈放の可能性の方が高いと言えます。
裁量保釈は裁判所が同法89条の要件に該当する場合でも特別な事情がある場合に裁判所の職権で保釈を認めるものです。
私が経験した保釈請求事案の中で、1件は酒酔い運転の道路交通法違反、もう1件は傷害事件があります。双方とも自白事件でしたが、酒酔い運転は保釈が認められ、傷害事件は、認められませんでした。傷害事件では、裁判所から罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると判断されました。被告人は当初から一貫して自白していましたが、被告人と被害者が顔見知りであり、働きかけがあり得ると起訴後でも判断されました。
(検察官の証拠に対する検討)
先ほど、第1回公判期日までは起訴から約1カ月あると言いました。この約1ヶ月間の間、弁護人は、検察官から証拠開示を受けて、被告人と開示された証拠について打合せを行い、提出を認める証拠と認めない証拠(書面の場合、同意、不同意といいます。)について公判期日前に検察官に対し意見を述べます。また、裁判所に対しても検察官の証拠について意見を述べておきます。これは、公判の円滑な進行に資する処置です。弁護人としては、被告人とよく話し合い、証拠として裁判所に提出される不利益を検討しながら結論を出していきます。
(公判廷の流れ)
公判期日は、①冒頭手続(刑事訴訟法291条)、②証拠調手続(同法292条本文、298条1項)、③弁論(同法293条)、④判決(同法342条)という手続きを踏みます。
第1回公判期日における冒頭手続では、裁判官から被告人への人定質問、検察官による起訴状朗読、裁判官による黙秘権等の告知、被告人及び弁護人の罪状についての認否が行われます。
証拠調手続では、検察官、弁護人双方の主張の立証が行われます。弁護人は、否認事件であれば検察官立証を崩すため書面の証拠調べ、証人尋問、被告人質問を請求しますし、自白事件でも情状のため同様の請求をします。
証拠調手続を終えて、判決言い渡し前の弁論では、検察官、弁護人それぞれが、自らの意見を述べます。通常、検察官の意見は論告と言われ、検察官は論告後、被告人に対してどのような量刑が適切であるかという求刑を行います。弁護人の意見は弁論と呼ばれ、証拠調手続で得られた証拠に基づいて意見を述べることになります。
私が担当した覚せい剤取締法違反の被告人は、覚せい剤使用の前科がありませんでした。しかし、被告人は、覚せい剤使用行為が家族を裏切っていると感じ、このままでは家族がバラバラになると思い、警察に自首をしたという経緯がありました。そこで、弁護活動として、尿の任意提出が行われたこと、家族に向けた手紙、法廷で被告人の反省と更生の決意を立証の軸にしました。しかしながら、他の罪もあったので実刑になってしまいました。それでも被告人は私の弁護活動に対してありがとうございましたと言ってくれました。
(弁護士 岡村政和)