(法律コラム:少年・刑事)刑事当番弁護士制度・接見について

「当番弁護士制度って、ご存知ですか。」

皆さんは、犯罪とは無縁であると思っていませんか。でも、そんなことはありません。

例えば、あなたが車を運転中、前方不注視で人に車をぶつけ傷つけてしまった場合、自動車運転過失傷害罪(刑法211条2項)が成立します。また、お酒の席で、言い争いから相手に対して手を出してしまった場合、暴行罪(刑法208条)が成立します。他にも、放置自転車を勝手に乗り回して利用する行為は、窃盗(刑法235条)もしくは遺失物横領罪(刑法254条)が成立します。

罪を犯した人は、警察などによって逮捕されることがあります。ですが、多くの一般市民は、自分、家族、知人が逮捕された時に、適切な対処の仕方がわからないと思います。

そこで、逮捕という緊急の事態に対応するため、全国の各弁護士会には、「当番弁護士」という制度があります。

この「当番弁護士制度」とは、「あらかじめ、○月○日は△△先生の当番の日と定めておき、出動要請があれば、すぐに警察署などにいって被疑者に接見することを定めておく制度」です。接見とは、警察署などで被疑者と面会することです。

いつ犯罪が起きるかどうかわかりませんから、弁護士が待機していても出動要請がない日もあります。しかし、当番弁護士制度があることで、被疑者が弁護士と接見したいと言えば(警察から当番弁護士制度の説明があります。)、警察から弁護士会への出動要請の連絡が入り、原則として24時間以内に弁護士が警察署などに駆けつけて接見します。なお、この当番弁護士制度は、被疑者が逮捕されたことを知った家族や、知人でも要請することができます。

では、次に「接見」の中身についてみていきましょう。

 

「接見を通して何をしてもらえるのでしょうか」

一般の方の接見は、1回20分程度、警察官の立会の上で許されるのに対して、弁護士の接見は、時間無制限で、警察官の立会いはありません。これは、刑事訴訟法39条で認められた権利です。

弁護士は、接見に行った際に、まず、なぜ被疑者が逮捕されたのかについて詳しく聞きます。その後、被疑者が、本当に自分が犯した罪によって逮捕されたのか否か(自白事件か否認事件か)を聞きます。

事件のことを聞いた後、弁護士は、被疑者に対して、「今、あなたは、弁護士に何を一番してほしいですか」と聞きます。その時、一番多いのは、家族や恋人、会社への連絡です。弁護士は、被疑者が連絡先を覚えているのであれば、家族などに対して連絡をしますし、覚えていないのであれば、警察と交渉して連絡先を教えてもらえるようにします。次の希望として多いのは、早く釈放されたいというものです。釈放の希望について、弁護士は、まず刑事手続の流れを概説し、続いて、被疑者が今どのような状況におかれていて、いつ頃、どのような状況になったら、釈放されるかなどについてお話します。詳しくは、次回のコラムでお話します。

刑事事件については、スピードが勝負です。フットワーク軽く動ける弁護士に頼むのがよいと思います。先ほど説明した「当番弁護士制度」の他、もちろん、個別に弁護士事務所に連絡をしていただき、その事務所の弁護士に依頼することもできます。

(弁護士 岡村政和)