(法律コラム:労災)労基署が「持ち帰り残業」を計算し、労災認定
金沢市で2011年6月に英会話学校講師の女性(当時22歳)が自殺したのは、自宅で長時間労働する「持ち帰り残業」が原因だったとして、金沢労働基準監督署が労災認定していたことが、11月6日わかりました(2014年11月7日付け京都新聞朝刊)。
このケースでは、労基署は残っていたメールや関係者の話から、女性は業務命令で英単語を説明するイラストを描いた「単語カード」を2000枚以上自宅で作っており、持ち帰り残業があったとしました。
残業時間は、労基署員が実際にカードを作成して時間を計測し、自宅で月に80時間程度の残業をしていたと結論付けたそうです。
この結果、会社での残業を合わせると、恒常的に月100時間程度の時間外労働があり、更に上司から怒られる心理的負担も加わり、うつ病を発症していたとして、労災が認定されました。
自宅での持ち帰り残業は、残業時間の客観的記録が残っていないことが多く、成果物から推測するしかありません。
それが困難で泣き寝入りする遺族や当事者も多いことと思います。
これまで私が関わったいくつかの教師の過労死裁判においても、自宅での持ち帰り残業時間を推定するため、多くの同僚教師の力を借り、自宅で作成されたプリントなどの成果物から残業時間を割り出していきました。
そしてそれを裁判所が残業時間として認定し、「業務上」認定を勝ち取ることができました。
でも、労基署段階で、しかも労基署員が自ら単語カードの作成を再現して時間を計測し、持ち帰り残業を認めたという事例はこれまでに聞いたことがありません。
画期的な認定だと思います。
(弁護士村松いづみ)