(法律コラム:労働)就職活動中の学生に対する「職場情報」開示義務(3月1日から)

 

今日3月1日から来春卒業予定の大学生らの就職活動が本格スタートしました。

 

そのような就職活動中の学生が求めた場合、企業に職場情報の提供を法律で義務付ける制度が今日3月1日から始まりました(2016年2月25日付け京都新聞朝刊)。

 

この制度は、昨年9月に成立した青少年雇用促進法にもとづくものです。

企業は、就活生からの要請があれば、下記の情報については提供する義務を負います。

 

対象は、

①離職率や平均勤続年数といった「募集・採用」

②月平均の残業時間や有給休暇・育児休業の取得の「雇用管理」

③研修制度の有無など「職業能力の開発・向上」

の3項目です。

 

ブラック企業が社会問題となる中、職場の実態を事前に知ることで就職先を選びやすくし、不本意な早期離職といったつまずきを防ぐのが狙いと言われています。

ただ、企業の開示義務は3項目からそれぞれ1要素以上を提供すれば良いとなっています。

つまり、1つの項目の中でどの要素を開示するかは企業が選択できるので、例えば、学生が知りたいのは有給休暇のことであっても、企業が開示したのは育児休暇のことで、学生の会社選びには十分に役立たないケースも出てくる可能性もあります。

 

他方、学生側からすると、企業の開示義務は学生からの請求が前提となっており、問い合わせることにより企業に悪印象を持たれ採用されないという不利益を恐れて開示請求をためらうという懸念もあります。

厚生労働省は、そうした不利益をしないよう指針を定め、企業に周知徹底することにしています。

 

労働現場における大きな前進になると良いのですが。

 

(弁護士村松いづみ)