(法律コラム:労働・労災)裁量労働の男性が過労死認定(東京・三田労基署)

 

「裁量労働制」で働いていた男性(死亡当時47歳)が、心疾患で亡くなったケースで、三田労働基準監督署(東京都)は、2015年3月に労災として認定しました。

 

被災者の男性は、証券や国債などの市場情報を提供する会社でアナリストとして働いていました。

勤務は「裁量労働制」。

裁量労働制とは、仕事の進め方などを労働者の裁量に委ね、実際の労働時間とは関係なく一定の時間働いたとみなして給料を支払うという制度です。

男性と会社が合意した残業時間は月40時間でした(みなし残業時間)。

 

裁量労働制の下で働いていたため、会社は男性の残業時間を把握しておらず、みなし残業時間の月40時間では労災認定は困難とみられていました。

 

しかし、遺族は、男性が作成したリポートの発信記録や同僚の証言をもとに労働実態を調べ、発症前1ヶ月には133時間の残業、発症前2~6ヶ月の平均残業時間は108時間であることがわかり、2014年8月に労災認定を申請。

翌2015年3月、労災として認定されました。

 

労働時間が不明確な裁量労働制の労働者が過労死として労災認定されるのは、極めてマレなケースと言えるでしょう。

裁量労働制のもとで働く労働者は、特に健康管理が重要です。

実際の労働時間もきちんと把握しておくことが大切ですね。

 

政府は、今国会に残業代ゼロ法案を提出するなど、労働時間規制をどんどん緩和しようとしていますが、過労死防止法のもとで、長時間労働の規制を強めることこそ、まず取り組まなければならない課題でしょう。

 

(弁護士 村松いづみ)