(法律コラム:刑事)GPS捜査 ルールなし
GPS。グローバル・ポジショニング・システムの略です。
地球を周回する人工衛星を利用し、電波を受信する機器の正確な位置を測定するシステムのことです。
軍事目的で開発されましたが、現在は、カーナビや、多くの携帯電話や時計にもGPSが搭載されています。
登山用のGPSもあって、道迷いしても、現在地がわかるのでとても便利です。
でも、自分が知らない間に、バイクや車に警察のGPSがつけられていたら、どうでしょうか。
実は、全国の警察では2006年から、GPS端末を捜査対象者の車にひそかに取り付けて追跡する捜査が始まっています(2015年3月3日付け赤旗)。
それが、警察庁の「移動追跡装置運用要領」です。
GPS捜査は、裁判所の令状を取らず「任意捜査」で使うとし、どんな場合に使用できるのか、実際にどのように運用されているかも明確にされていません。
しかし、「任意捜査」は、あくまで「任意」、すなわち本人の了解があることが前提です。
本人に無断で端末をつけることは「任意捜査」とは言えません。
憲法35条1項は「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は・・・令状がなければ、侵されない」と定めています。
GPS捜査をめぐっては、大阪や福岡などの刑事裁判で争点となって争われています。
なお、窃盗事件の捜査対象者の車に端末を取り付けた大阪府警の手法について、大阪地裁は、2015年1月28日までに、「尾行の補助的手段にすぎなかった」「全容解明にはGPSを取り付ける必要性は高く令状を請求する必要はない」「プライバシーの侵害は大きくなく、重大な違法とはいえない」などという不当な判断を示しました。
もしかしたら、あなたの車にもGPSがつけられているかも・・・!!
(弁護士村松いづみ)