(法律コラム:その他)民法改正法案について(その3)

 

今回は、社会に広く浸透している個人の「保証」について解説します。
なお、本解説は、日本弁護士連合会発行の「自由と正義」2015年5月号を参照しています。

 

他人の債務の保証については、大きな責任を伴います。
そのため、個人保証については、その保護を行うべきであるという意見が以前より存在しました。
そこで、改正法案の審議の結果、
「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約」
に対象を限定の上、これらの契約については、保証人になろうとするものが法人である場合を除き
「その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人となろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない」
という規定となっています(改正法案465条の6第1項)。

 

「事業のため」のための債務は巨額になることが多いので、保証契約締結前に、公正証書での「保証の意思の確認」を求めたことが大きな改正点となっています。

 

なお、改正法案には、適用除外規定があります。
それは、主たる債務者が、法人の場合は、その法人の取締役等や株主総会の議決権の過半数を有する者は従来通り、公正証書は不要で、単なる書面で保証契約が締結できます。

 

その他、改正法案の審議の過程で、実際の金融の必要性から、「主たる債務者(法人は除く)が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」についても公正証書は不要とされました。

 

今回の改正法案は、保証契約を書面で行うこと(現行民法446条2項)を求めた現行民法をさらに進めたものです。
ただし、今回の改正法案は、「保証意思の表示」を公正証書で行うことを義務付けたものであり、「保証契約」そのものを公正証書で行うことを求めたものではないことに注意が必要です。
これは、保証契約そのものの公正証書化を要求すると、その公正証書が、債務名義となって訴訟手続をとることなく強制執行を行うことが可能となり、かえって個人の保証人の保護を図った趣旨に反するからです。

 

そこで、個人保証人保護の観点から、保証契約そのものと「保証意思の表示」については、厳格に区別し、改正法案の趣旨が活かされるような運用を行っていくこと(例えば、「保証意思の表示」と同一の機会に「保証契約」を公正証書によって締結することを禁止する等)が望まれます。

 

(弁護士 岡村政和)