(最新法令:労災・その他)行政不服審査法の改正

 

行政不服審査法が改正されました。

 

この法律は、1962年に制定されましたが、抜本的な改正は、今回が初めてです。

公正性の向上や使いやすさの向上、国民の救済手段の充実・拡大をはかることが改正の趣旨と説明されています。

 

「行政不服審査法」は、一般の人にとっては、耳慣れない法律かもしれません。

この法律は、行政が行った処分に対し、不服を申し立てる場合の手続きなどを定めています。

 

私が普段、取り扱う事件を例にあげて説明しましょう。

例えば、夫が過労死し、遺族が労災請求したものの、監督署は労災と認めてくれなかったような事案です。

これまでは、すぐに裁判を起こすことはできず、60日以内に審査請求し、それでもダメだった場合には、更に、その結論を知った日から60日以内に再審査請求をしなければなりませんでした。

審査請求そして再審査請求を経て、訴訟を提起する時には、本人が死亡されて数年が経過し、更に訴訟で判決が下りる時には約10年も経過してしまっていることもありました。

これでは、「遺族の救済」という意義もある労災制度の趣旨からは大きく反しており、私たちはいつもはがゆい思いをしていました。

 

今回の改正法では、再審査請求を経なくても、訴訟を提起することが可能となりました。

また、審査請求の期間も、60日以内から3ヶ月以内に延長され、不服申立をするかどうか考える期間が多くなりました。

 

法律の施行日は、2016年4月1日です。

元々の処分があったことを知った日が、同年3月31日までの場合は、4月1日以降に審査請求を行った場合でも旧制度が適用されます。

但し、訴訟の提起については例外で、3月31日までに審査請求の決定がおこなわれた事案であっても、まだ再審査請求ができる期間内であれば、新制度が適用となり、再審査請求をしなくても提訴できることになりました。

 

今後、労働保険審査制度の運用も変わっていくものと思われます。

国民が本当に使いやすい制度にしていかなければなりません。

 

 

(弁護士村松いづみ)