(最新判例:相続・遺言)公正証書遺言の無効(口授について)(大阪高裁)

 

公証人が作った母親の遺言書が有効かどうか、兄弟が争った訴訟の控訴審判決で、遺言の趣旨が母から公証人に伝わっていなかったとして、大阪高裁は、2014年8月28日、無効との判決を下しました(2014年8月27日付け京都新聞朝刊)。

 

公証人は、裁判官や検察官など法律実務の経験が長い人の中から、法務大臣が任命します。

公証人が遺言者から面前で聞き取った内容を文章にまとめたものが「公正証書遺言」と呼ばれるものです。

公正証書遺言の作成を希望する人は、公証人の前で、自分が作成した遺言の内容を口頭で伝えなければなりません(民法969条)。

これを「口授」(くじゅ)と言います。

 

公正証書遺言では、遺言者の遺言能力(認知症の程度)が争われるケースはありますが、「口授」が争われたケースは、これまで少ししかありませんでした。

 

本判決は、まだ新聞報道でしか、その内容がわかりませんが、大阪高裁は、母親は最終的な署名のために赴いた公証人役場で「公証人が遺言内容を読み上げるのをうなずいて聞いていた」だけと認定し、母親から公証人への直接の内容伝達がないとして、遺言を無効としたようです。

 

なお、「口授」が原則ですが、口がきけない、あるいは耳がきこえない人の場合には、通訳者によって公正証書遺言を作成することは可能です(民法969条の2)。

 

(弁護士村松いづみ)