(最新判例:労働)高齢者の再雇用で事務職に清掃提示は違法(名古屋高裁)

 

トヨタ自動車で事務職だった元従業員の男性(63歳)が、定年退職後の再雇用の職種として清掃業務を提示されたのは不当として、事務職としての地位確認と賃金支払いを求めた訴訟で、名古屋高裁は、2016年9月28日、トヨタに対し約120万円の賠償を命じました(2016年9月29日付け京都新聞超過員)。

 

高年齢者雇用安定法という法律があります。

この法律では、企業に対し、希望する全社員を65歳まで雇用するよう義務付けています。

これは、厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢が2013年4月以降、60歳から65歳に段階的に引き上げられていることに伴う措置です。

 

この男性は、トヨタ自動車の事務職として働いてきましたが、定年後、最長5年の雇用が認められる社内制度で事務職としての再雇用を求めましたが、会社からは1年契約のパート労働で清掃業務を提示されたため、拒否していました。

 

判決は、定年後にどんな労働条件を提示するか企業に一定の裁量があるとした上で、「適格性を欠くなどの事情がない限り、別の業務の提示は高齢者雇用安定法に反する」と指摘し、男性に対する全く別の職種の提示は「継続雇用の実質を欠き、通常解雇と新規採用に当たる」と判断しました。

 

法律の趣旨に沿った画期的な判決です。

 

(弁護士村松いづみ)