(最新判例:労働)男女賃金差別を認める(金沢地裁)
性別を理由に賃金差別を受けたとして、機械器具設置工事会社「東和工業」(金沢市)の元女性社員Mさんが、同社に賃金や退職金の差額などの支払を求めた訴訟で、金沢地裁は、2015年3月26日、同社が性別で雇用形態を振り分けていたと認め、労働基準法に違反するとして、約440万円の支払を命じました。
Mさんは、1987年事務職で入社し、1990年に設計部に異動しましたが、ほかの男性社員と対等な賃金待遇がされませんでした。
そして2002年には「総合職」「一般職」という分かれた雇用制度が導入され、Mさんは設計部内で唯一の一般職となりました。
判決は、一般職と総合職との賃金を分ける同社の雇用制度は、実質的には男女別の賃金表を設けた制度だったと判断し、Mさんの主張を認めました。
本件事案や判決の内容の詳細は、まだわかりませんが、本件のような「総合職」「一般職」という振り分けをする雇用制度のことを「コース別雇用制度」と言います。
男女雇用機会均等法が施行された時、男女別の差別賃金制度の「隠れ蓑」として、「男性」「女性」という言葉は使用せず、「総合職」「一般職」という言葉を使用し、その実、「総合職」は男性ばかり、「一般職」は女性ばかりを配置するというコース別雇用制度が大企業を中心に少なくない企業で導入されました。
その後、厚生労働省は、コース別雇用管理が実質的に男女別になっていないかの留意点などを公表していますが、一般的には、処遇の違いに合理性があるかどうか等が問われ、男女差別の立証は容易ではありません。
その意味でも、この判決は素晴らしいものだと思います。
(弁護士村松いづみ)