(最新判例:その他)福島原発事故の自主避難者に対し初の賠償命令(京都地裁)

 

東京電力福島第1原発事故で、福島県から京都市に自主避難した40代男性と家族が、事故により仕事や人間関係を失ったストレスでうつ病などを患ったとして、東電に約1億8400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、2016年2月18日、京都地裁であり、夫婦の損害として約3000万円の支払を命じました(2016年2月19日付け京都新聞朝刊)。

 

自主避難者に賠償を命じた判決は全国初となります。

元裁判官の井戸謙一弁護士が原告代理人をされていたようです。

 

判決は、「一家が住んでいた市で放射線量などの危険性が残っていた2012年8月末までは、自主避難を続けたことは合理性がある」と判示しました。

 

その上で、男性は、会社社長の辞任を余儀なくされるなどの強度のストレスを受け、遅くとも2011年5月に不眠症となり、就労不能になったと判断。

同社で働いていた妻も精神疾患にかかった夫の付き添いのほか、事故による転居で実家から子育ての援助を頼れなくなり、就労できなくなったとしました。

それによって、判決は、政府指針には含まれない休業損害を、夫婦で合計2100万円認めました。

 

自主避難に伴う慰謝料としては、男性に100万円、妻に70万円を支払うよう、東電に命じました。

ちなみに、男性が、訴訟提起前に申し立てた原子力損害賠償紛争解決センターが示した和解額のうち、慰謝料は大人一人20万円でした。

 

訴訟は時間が長くかかるため、東電や裁判外紛争解決手続きの安い和解金額で泣き寝入りされている避難者の方もたくさんおられるでしょう。

避難者の方に発生した損害の内容は、それぞれ個別の事情によって異なります。

判決は、賠償金額は個別事情で一律な線引きをしませんでした。

この判決は、避難者の救済に資するものになると思われます。

 

(弁護士村松いづみ)