(最新判例:その他)成年被後見人に選挙権
公職選挙法11条1項1号は、成年後見開始の審判を受けた人について、「選挙権を有しない」と定めています。
原告であるダウン症の女性(50歳)は、成人してから成年後見開始の審判を受けるまでの25年間にわたり選挙権を行使していましたが、この公選法の規定により審判後、選挙権を行使できなくなりました。
成年後見制度は、本人の財産を管理処分する能力の有無・程度について判断する制度であり、選挙に関する能力を判断する制度ではありませんので、これを憲法が定める重要な権利である選挙権に借用するというのは根拠がありません。
また、障害があることを理由に選挙権をはく奪することは、国連の障害のある人の権利条約29条及び自由権規約25条の要請にも反しています。
そして2013年3月14日、東京地裁は、この公選法の規定を憲法に違反するとの判決を下しました。
裁判長は、10分近くかけて判決理由の骨子をわかりやすく説明し最後に原告に対し、「どうそ選挙権を行使して社会参加してください。堂々と胸を張っていい人生を生きてください」と語りかけたそうでう。
裁判官がこのように判決の時に自分の思いを語ることはきわめてマレで、なかなか人間味あふれる裁判官だなあと感じました。
国は控訴せず、速やかに立法的解決をはかることが望まれます。
(弁護士村松いづみ)