(最新判例:その他)性同一障害と父子関係(大阪家裁)

 

このような裁判が争われていたのですね。

 

性同一障害で、性別を女性から男性に変更した男性が、第三者から精子提供を受けて妻が出産した次男と父子関係があることの確認を求めた訴訟の判決で、大阪家裁は、9月13日、男性の請求を棄却しました(2013年9月13日付け京都新聞夕刊)。

 

性同一障害については、2003(平成15)年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が制定され、法が定めた要件を満たす人については、家庭裁判所が審判により、法令上の性別の取り扱いと、戸籍上の性別記載を変更できるようになりました。

これによって、戸籍上の性別を例えば「長男」を「長女」に変更したり、変更後の性で婚姻届を出すことができるようになりました。

 

今回の裁判は、次男の出生届を提出しましたが、役所は、性別の変更が記載された戸籍から生殖能力がないとして男性を父と認めず、職権で父親欄を空白にした次男の戸籍を作成したため、男性が父子関係を確認する訴訟を起こしたものです。

 

民法は、妻が婚姻中に懐妊した子を「夫の子と推定する」と規定しています(民法772条1項)が、判決は、「母が夫との性交渉で次男を懐妊することが不可能だったのは戸籍の記載から明らか」として、民法の推定は及ばないと判断しました。

 

人工受精によって出産した子どもの場合には、民法上の「推定」によって、戸籍上は父子関係が認められるのに、本件の場合、取扱が異なることはわりきれません。

また民法772条については、長期間別居していた夫婦の場合や夫に生殖能力がなかった場合でも、逆に「夫の子」と「推定」されてしまうという不都合もあります。

 

先日の最高裁が下した婚外子に相続分の違憲判決もあり、家族制度の変化に対応した法制度が望まれます。

 

(弁護士村松いづみ)