(最新判例:その他)小学生が蹴ったボールで転倒し死亡―親の「監督義務違反」を否定(最高裁)
小学生が、学校の校庭でサッカーゴールに向かって
フリーキックの練習をしていた。
そのサッカーボールが、ゴールの後ろにあった門扉を越えて
校庭外の路上へ転がり、
よけようとした男性が転倒、その後死亡したという事案で、
親の監督義務違反を認めた1審、2審を覆し、
最高裁判所が親の監督義務違反を否定する判決を下しました
(最高裁判所平成27年4月9日判決)。
以前から注目していた裁判で、
最高裁の判決がどうなるのか気になっていました。
上記事案を素直に見たときの、個人的な感想は、
これで一審、二審で監督義務違反が認められたというのは、
かなり親に厳しすぎる判決だったのではないかと思います。
ゴールに向かってフリーキックの練習をするという
通常であれば危険性のない行為で、
たまたまボールが門扉を越え、
路上に出て男性を転倒させ、死亡に至らせてしまった――
そういう可能性まで予見して、
親が個別具体的に子どもを指導監督せよ、というのは、
特別の事情がないかぎりいうことができないというのが
最高裁判所の判断でした。
ポイントは、子どもの行動が、
「通常人身に危険が及ぶ行為であったかどうか」。
親の目の届く範囲で子どもが遊んでいるうちはともかく、
小学生など一人で子どもが遊ぶ年齢になってしまったら、
その子どもがする行為全てを、親が個別具体的に指導監督することはできません。
そういう場合、親は、
一般的に危険な行為に及ばないようにという日頃の指導監督していれば、
子どもがした「通常人身に危険が及ぶとものとはみられない行為」
(今回であればサッカーゴールへのフリーキックの練習)で、
たまたま第三者に損害を生じてしまったとしても、
監督義務違反には問われないという判断です。
今回の最高裁判決は、
親が直接監視していない状況下での子どもの行動について、
親がなすべき指導監督義務の範囲を、
一般人の感覚に沿うかたちで判断したものだと感じます。
今後の、未成年者に対する親の監督義務違反の判断にも
実務上大きな影響があるのではないでしょうか。
(弁護士 日野田 彰子)