(最新判例:その他)実親不同意でも特別養子縁組(宇都宮家裁)

宇都宮家裁で、特別養子縁組に関する

画期的決定がなされました。

(2月10日決定、4月2日確定)

 

特別養子縁組は、世間ではあまり知られていません。

家の存続などのために行われる普通養子縁組と異なり、

特別養子縁組は子どもの福祉のために行われるものです。

実親との法律上の親子関係はなくなり、

養親との間で、完全な法律上の親子関係が成立します。

ですので、たとえば、子どもは原則6歳以下でなければならなかったり、

実親の同意が必要であったりと、厳格な制約が課されているのです。

 

しかし、特にこの「実親の同意」がネックとなって、

特別養子縁組の利用が進んでいないと言われています。

つまり、子どものためにはどう考えても、特別養子縁組が望ましい、

しかし実親がどうしても縁組に同意しない、

そうして縁組の機会を奪われている子どもが、非常に多いのです。

 

民法上は、

・父母がその意思を表示することができない場合

・父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合

には、実親の同意は不要とされていますが、

実際には、虐待などが明らかな場合でなければ、

実親の同意を要求するのが実務上の取扱いでした。

 

けれども、

子どもを施設に預けっぱなしで、

面会にも行かない、

自分で育てるつもりもない、

しかし子どもとの縁は切りたくないから、縁組にも同意しない・・・

そういう実親がいた場合、不利益を受けるのは子どもたちです。

縁組により、両親のいる温かい家庭で育ててもらうという機会を

奪われてしまう子どもたちなのです。

 

今回のケースでは、

子どもは生後まもなくから7年間、里親のもとで生育されており、

実親との交流は全くなかったというケースで、

実親からの明確な虐待などはないが、

子どものためには、里親との間で法律上の親子関係を築くのが

子どもの福祉に資する、

逆にいえば、里親と引き離すことが

「養子となる者の利益を著しく害する」場合に該当すると

判断されたもののようです。

血のつながりより心のつながりを重視したと、そういうことでしょう。

 

宇都宮家裁の決定は、

特別養子縁組が、本来子どもの福祉のための制度であるという

制度趣旨に立ち返り、

明確な虐待等がない場合であっても

実親の同意を不要と判断したもので、

本当に画期的な決定です。

 

この決定が実務に良い影響を与え、

特別養子縁組の利用が、

もっともっと促進されていくことを強く期待します。

 

(弁護士 日野田 彰子)