(最新判例:その他)嫡出否認「夫のみ」合憲(神戸地裁)

 

この日本に、戸籍のない子がいることをご存知ですか?

 

民法772条は、妻が婚姻中に妊娠した場合には夫の子、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子、と推定すると規定しています。

これを「嫡出推定」と言います。

他方、この「嫡出推定」を覆すための「嫡出否認」の訴えについては、民法774条は、夫のみに認めています。

夫の暴力から逃れた後、離婚する前や、離婚後300日以内に別の男性との子を出産した女性は、本当の父親の名を書いた出生届が受理されず、子が無戸籍になることが少なくありません。

 

無戸籍者は、2017年11月10日時点で全国に719人いるそうです。

戸籍がないと、選挙権を行使することも、健康保険に加入することも、銀行口座を開設することもできません

 

そんな中、上記した、「嫡出否認」を夫だけに認める民法774条の規定は、男女平等に反するとして、損害賠償を求めた訴訟の判決が2017年11月29日、神戸地裁でありました(2017年11月30日付け京都新聞朝刊)。

嫡出否認の規定の合憲性を争う訴訟は、全国で初めてです。

 

判決は、嫡出否認規定は、婚姻中の夫婦に生まれた子の身分の安定や利益確保が目的で、合理性があり憲法違反には当たらないと判断し、原告の請求を棄却しました。

ただ、判決は、無戸籍が生じるというような問題を避ける対策として、離婚訴訟での支援や個人情報を夫側に伝えないようにする仕組みなどの法整備を図るべきだと指摘しました。

 

原告側は控訴する方針。

裁判所の結論を待つのではなく、無戸籍の子が生じないような立法の制定が早急に求められます。

 

(弁護士村松いづみ)