(最新判例:その他)銀行口座に振り込まれた児童手当の差押えは違法(広島高裁松江支部判決)

 

2013年3月29日、鳥取地方裁判所は、児童手当(差押禁止財産)が振り込まれた預金口座に対し、鳥取県が税金の滞納処分として行った差押えを違法とする画期的な判決を下しました。

そして、昨年11月、控訴審の広島高裁松江支部も同じく違法と判断し、この判決は確定しました。

 

児童手当法は「児童手当の支給を受ける権利は差し押さえることはできない」(15条)と定め、子ども達のため児童手当を確実に受け取れるように保護しています。

この規定により、仮に税金を滞納している人に対しても、行政は、直接、この児童手当を差し押さえることはできません。

そこで、鳥取県は、児童手当が本人の銀行口座に入金されるのを待って、これを狙って差押えを行ったわけです。

その理屈は「『児童手当の支給を受ける権利』は差押え禁止だけど、児童手当が銀行口座に入金されて預金となった後は『預金の払い戻しを求める権利』へと変化するから差押えは許される」というものです。

 

確かに、債権者である金融機関が、差押え禁止財産である国民年金・労災保険金が振り込まれる債権者の預金口座から相殺したことを有効した最高裁判例があります(1998年2月10日)。

しかし、この最高裁のケースは、預金の中に差押禁止財産と一般財産とが混在し、差押え禁止財産を識別・特定することが難しい事例でした。

 

今回の鳥取の裁判では、行政が預金口座に児童手当が振り込まれる可能性が高いことは十分認識できたとし、預金口座の金も児童手当がほとんどだったと判断し、差押えは権限を濫用した違法なものという結論を下したわけです。

 

行政による問題のある差押えは、年金支給後の預金口座への狙い撃ちなど全国各地でなされています。

総務省は、高裁判決を受けて、全国の自治体に通知を発しました。

この判決を生かして、違法な税金徴収が是正されるようにしましょう。

 

(弁護士村松いづみ)