(最新判例・その他)国家公務員の政治活動についての2つの最高裁判決

 

休日に職場外の場所で政党のビラや機関紙を配ったことが、国家公務員の政治活動を禁じた国家公務員法と人事院規則に違反するとして、厚生労働省課長補佐(当時)と旧社会保険庁職員(当時)が逮捕・起訴された事件で、12月7日、最高裁第2小法廷は、前者は有罪、後者は無罪とする判決を下しました。

 

これは、国家公務員の政治活動を禁止する国家公務員法102条と、政治活動の自由を保障する憲法21条1項(表現の自由)をどのように解釈するかが争われた事件です。

 

逮捕は2004年~2005年ですが、国連の自由権規約委員会はは、2008年10月に日本政府に対し、公職選挙法(文書配布と戸別訪問禁止)と国家公務員法102条の撤回を求め勧告しています。

欧米などの先進諸国は、勤務時間外や勤務場所以外の政治活動は自由です。

 

今回の最高裁判決は、国家公務員が行った政治活動が国公法に違反するのは「政治的中立性が損なわれるおそれが実質的に生じる」場合という初めての判断を示しました。

その上で、厚生労働省課長補佐は管理職にあたり、政治的中立性が損なわれるとして有罪とし、元社会保険庁職員は管理職ではなく無罪としました。

 

なお、この最高裁判決には、須藤正彦裁判官の反対意見が付されています。

須藤裁判官は、厚生労働省課長補佐が管理職的立場ではあっても、休日に、無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって、いわば、一私人、一市民として行動しているとみられるから、公務員の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるとはいえないとしています。

 

(弁護士村松いづみ)