(法律コラム:その他)安全保障関連法案について

 

今回は、現在、今国会で、審議されている安全保障関連法案について取り上げたいと思います。
安全保障関連法案とは、日本の今後の安全保障に影響を与える法律の総称のことを言います。

 

まず、今国会で初めて議論される存立危機事態という概念から、安全保障関連法案について見ていきたいと思います。

 

今国会では、集団的自衛権の行使を前提として、既存の法律の中に、「存立危機事態」という概念を入れ込み、集団的自衛権の行使を行えるように安保法制関連法案の法改正が目指されています。
「存立危機事態」とは、政府の説明によれば、日本以外の他国への武力攻撃で、日本の存立が脅かされる明白な危険のある事態のことを言うとされています。
今国会では、個別法(例えば、特定公共施設利用法、米軍支援法、海上交通規制法等)への「存立危機事態」の導入によって、例えば、米国が攻撃を受けた際、日本の自衛隊が海外に派兵される可能性も飛躍的に高まることになるのです。
そして、これらの個別法による自衛隊派兵には、国連の決議が不要となっています。

 

次に、「重大影響事態法」が、既存の周辺事態法を改正する形で、国会で審議されています。
しかし、周辺事態法が「日本周辺」の平和と安全に重大な影響を与える事態が発生した場合を想定して作られた法律であるのに対し、重大影響事態法は、「日本周辺」という要件を削除しています。
すなわち、世界のどこでも、日本の平和と安全に重大な影響を与えるケースと認められれば、自衛隊が海外に派兵されることになります。注意しなければならないことは、重大影響事態法における自衛隊の海外派兵の際、国際連合の決議は必要ではないということです。
そして、重大影響事態法が予定している自衛隊の活動内容は、武力行使を行う米軍等の支援活動で、具体的には弾薬の補給、航空機への給油等があります。
また、重大影響事態法による自衛隊の活動場所としては、今までのような後方地域という限定は無くなり、現に戦闘行為が行われている場所以外はすべて認められることになります。

 

さらに、国際平和支援法(海外派兵恒久化法)という新法案があります。
国際平和支援法が適用される要件は、国際社会の平和と安全が侵害される状況で、国連決議が存在している時とされています。
国際平和支援法による自衛隊の活動内容は、武力行使を行う他国軍部隊への協力支援活動で、相手国に制限はありません。
また、自衛隊の活動場所として、重大影響事態法と同じく、非戦闘地域の限定は無くなり、現に戦闘行為が行われている場所以外は認められることになります。

 

最後に、PKO協力法(国際平和協力法)が、大幅に改正されようとしています。
すなわち、改正によって、「安全確保活動」として、自衛隊が特定地域保安のための監視、駐留、巡回、検問、警護等を含む広範な活動に拡大しようとしています。
また、自衛隊は、任務遂行のための武器使用が認められることになります。

 

このように、「存立危機事態」の導入、重大影響事態法、国際平和支援法、PKO協力法によって、切れ目のない自衛隊の海外派兵が可能となってしまいます。
具体的には、国連決議の存否によって、米軍支援法等・重大影響事態法と国際平和支援法の使い分けによる自衛隊の海外派兵が可能となり、停戦合意後も、特定地域の保安を任務として、自衛隊が海外に派兵されることになります。

 

今国会では、「集団的自衛権の行使は日本国憲法上許されない」としてきたこれまでの政府見解を変更し、日本が海外で戦争できるようにする法案が国民の十分な理解のないまま可決されようとしています。
国民による反対の声が重要です。皆さんの反対の声を国会に届けましょう。

 

(弁護士 岡村政和)