(法律コラム:その他)奨学金、保証人の支払義務は「半額」

 

昨年(2018年)11月1日付け朝日新聞に「奨学金、保証人の義務『半額』なのに・・・説明せず全額請求」という記事が掲載されました。

 

奨学金制度を実施する日本学生支援機構が、保証人に対し、法的には残債務の2分の1しか請求できないのに、全額を請求し、中には知らずに全額を返還してしまった保証人もいるということで、問題となっています。

過去8年間で延べ825人に総額13億円を全額請求し、9割以上が応じたとのことです。

 

機構は、奨学金を貸与する際、借りる学生本人が返せない場合に供え、連帯保証人(父か母)と保証人1人(4親等内の親族)の計2人が返還義務を負う人的保証か、借りた本人が保証機関に一定の保証料を払い、返せない時に一時的に肩代わりしてもらう機関保証を求めます。

 

人的保証の場合、「連帯保証人」と単なる「保証人」とでは、いくつか違いがあります。

 

①催告の抗弁(民法452条)

債権者が本人や連帯保証人に請求せず、いきなり保証人に請求をしてきた場合には、まずは本人や連帯保証人に請求するように求めることができます。

 

②検索の抗弁(民法453条)

本人に財産がある場合には、強制執行が容易であることを示して、保証人は返済を断ることができます。

 

③分別(ぶんべつ)の利益(民法456条)

これが、今回問題となっている法律ですが、保証人が2人以上いるとき、連帯保証人は全額返す必要がありますが、保証人は頭割りになります。

ですから、奨学金のように、連帯保証人と保証人が1人ずついる場合には、保証人は2分の1だけ返済すればよいわけです。

 

多くの保証人は、このような「分別の利益」があることを知らず、日本学生機構はその無知につけこんで、過大請求をしていると言わざるを得ません。

 

機構は、「法解釈を誤った」と認め、保証人に謝罪した上で、取りすぎた分を返金すると言います(2019年1月19日付け朝日新聞朝刊)。

ただし、保証人に「分別の利益」があることを積極的に伝える考えはないとも。

 

奨学金事業への信頼がゆらいでいます。

 

(弁護士村松いづみ)