(法律コラム・その他)事実婚と遺族年金
事実婚であっても、住民票などで一緒に暮らしている事実が確認できれば、遺族年金の支給の対象になります。
但し、戸籍上の配偶者が別宅に住んでいる「重婚的内縁関係」の場合には、戸籍上の配偶者か事実婚の配偶者か、どちらが遺族年金を受給できるかは争いがあります。
戸籍上の配偶者と長期間別居状態にあり、仕送りもなく、夫婦としての実体を失っている場合に限り、事実婚の妻が受給することができます。
平成17年4月21日、最高裁判所は、死亡した男性と23年間別居していた戸籍上の妻との婚姻関係は修復の余地がないほど形がい化しており、男性と17年間同居していた事実婚の妻とは事実上婚姻と同様の状態にあったと述べ、事実婚の妻の方に年金の受給を認めました。
遺族年金は、死亡した人の収入で生計を維持していた人の生活保障という趣旨で支給されるものですから、最高裁の判断は妥当と言えるでしょう。
長期期間別居していても絶対に離婚しないという戸籍上の配偶者もいますが、「遺族年金」という分野では、形だけの配偶者の座も安泰ではないようです。
(弁護士村松いづみ)