(最新判例:労働)退職金減額、職員に十分な説明必要(最高裁)

 

山梨県内の信用組合が合併を繰り返し、現在に至る山梨県民信組が退職金を減らしたのは不当として、旧峡南信組出身の元職員12人が合併前の基準での支払を求めた訴訟で、最高裁は、2016年2月19日、賃着や退職金を不利益変更する際は、労働者側に「十分な情報提供や説明が必要」とする初めての判断を示しました(2016年2月20日付け京都新聞朝刊)。

 

元職員らは、退職金の規定変更の同意書に署名押印しており、第1審の甲府地裁も原審の東京高裁も「合意書への署名は有効な意思表示だった」として、元職員らに対し敗訴判決を言い渡していました。

 

しかし、最高裁は、「労働者は同意の基礎となる情報を収集する能力に限界がある。署名押印があったとしても、労働者への事前の情報提供の内容などに照らして判断すべき」と指摘しました。

しかも、最高裁は、その説明内容について「自己都合退職の場合には支給額が0円になる可能性が高くなることなど、具体的な不利益の程度を説明する必要があった」などとして、審理が尽くされていないと判断し、高裁に差し戻しました。

 

労働条件の変更には、形式的な同意ではなく、十分な説明を受けた上での労働者の自由な意思表示が必要と判断したことは、当然とは言え、画期的なものと言えるでしょう。

 

(弁護士村松いづみ)