(法律コラム:少年・刑事)刑事手続の流れと弁護活動について④
前回までは、第1審の刑事手続と弁護活動を見てきました。今回は、第1審の判決に不服があった場合の手続及び弁護活動についてお話します。
(控訴審について)
第1審の判決に不服がある場合、被告人は14日以内に控訴をすることが出来ます(刑事訴訟法372条、同373条)。控訴審は、事後審と言われ、一審判決を前提として事後的な審査を加えるにすぎません。
また、控訴できる場合、すなわち「控訴の理由」は法定されています(同法384条、377条ないし383条)。具体的には、訴訟手続の法令違反(同法379条)、法令の適用に誤りがあること(同法380条)、刑の量定が不当であること(同法381条)、事実誤認(382条)等があります。後述の通り、弁護人は、控訴趣意書という書面で、控訴の理由を主張していくことになります。
控訴審の注意点としては、事後審という性格上、控訴趣意書に記載された控訴理由の判断のみが行われ、裁判所は、第1回の公判期日までに控訴趣意書と一件記録の審査を終えてしまい、第1回公判期日に結審する事が多いという点です。
(控訴審の弁護人活動)
控訴審で行う弁護活動の中心は、控訴趣意書の作成です。控訴審では、弁護人が積極的に控訴理由の存在を示す必要があるのです。控訴趣意書提出期限までに新たな証拠の提出や控訴理由について検討していくことになります。
控訴審でも、控訴理由その他の1審判決の破棄理由の調査のため、新たな事実の取調べを求めることが出来ます(同法393条)。新たな証拠の取調べは、公判期日の1週間前か、少なくとも控訴趣意書の提出期限までに提出します。
新たな証拠の典型例は、原判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状(同法393条2項)に関する事実で、例えば1審判決後に被害者とした場合の示談書があります。但し、控訴審の事後審という性格上、第1審のような長い時間ではなく、被告人質問も極めて短時間(5分程度)という実情はあります。
(上告審について)
控訴審の判決に不服がある場合、被告人は14日以内に上告することが出来ます。しかし、上告理由は憲法違反、判例違反に限定されており(同法405条1号ないし3号)、事実誤認等も裁判所の職権による破棄理由になりますが、著しく正義に反する場合に限定されています(同法411条)。
(弁護士 岡村政和)