(法律コラム:離婚)離婚後婚姻時の姓を選んだが、旧姓に戻りたい

 

離婚する時、旧姓に戻るか、そのまま婚姻時の姓を名乗るか、迷う方もいらっしゃると思います。

離婚届を提出すると、一旦は旧姓に戻りますが、離婚から3ヶ月以内であれば、届出をするだけで、婚姻時の姓を続けて使うことができます(民法767条)。

ですから、迷う場合には、3ヶ月かけてゆっくり考えたらいいよとアドバイスします。

 

Aさんは、夫と離婚する際、子どもの姓をAさんの旧姓に戻すのなら離婚に応じないと言われ、子どもと別の姓になりたくなかったため、やむなく婚姻時の姓を選択しました。

離婚後、Aさんは、生活の中で元夫の姓を使いたくなかったため、日常生活や仕事関係において、旧姓を通称として使ってきました。

 

そんなAさんから「戸籍を正式に旧姓に変更できませんか?」という相談を受けました。

既に離婚から7年が経過しようとしていました。

1度婚姻時の姓を選んでしまったAさんが戸籍も旧姓に変えたい場合には、家庭裁判所の許可が必要です。そして、その場合、姓を変更する「やむを得ない事由」が要件となります(戸籍法107条)。

Aさんが使用してきた仕事上の名詞、年賀状などの手紙、子どもの学校からの保護者への文書など、長年にわたり日常的に旧姓を使い続けてきたという証拠を添えて申し立てを行いました。

 

その結果、家裁は、Aさんが戸籍上の姓を旧姓にすることを認めました。

 

姓や名前を変えることは簡単ではないと言われていますが、いろいろ過去の裁判例を調べてみると、婚姻時の姓を選んだ人が、その後、旧姓に変更することは要件も緩やかに解されているような気がします。

 

(弁護士村松いづみ)